Disease

目の病気と治療

流行性角結膜炎(はやり目)|角膜混濁を防ぐための治療・検査・感染対策

EPIDEMIC KERATOCONJUNCTIVITIS
流行性角結膜炎(はやり目)は
「赤い目」だけの病気ではありません

流行性角結膜炎はアデノウイルスによる感染力の強い角結膜炎です。 強い充血や目やにだけでなく、角膜びらんや角膜上皮下混濁を起こし、 まぶしさ・かすみ・視力低下が長く残ることがあります。 診断した時点だけでなく、発症後の角膜の変化を確認することが重要です。

大切なのは「はやり目だから治るまで待つ」だけで終わらせないことです。 症状が軽くなってきたころに角膜病変が現れることがあります。 見えにくい、まぶしい、痛い、黒目が濁って見えるといった症状があれば、 指示された時期に必ず再診してください。

流行性角結膜炎とは|アデノウイルスによる「はやり目」

流行性角結膜炎(EKC)は、アデノウイルスによって起こる感染性の高い眼疾患です。 涙や目やに、それらが付着した手指、タオル、身の回りの物などを介して感染が広がります。

強い充血・目やに

白目が強く赤くなり、涙や目やにが増えます。朝、目やにでまぶたが開きにくくなることもあります。

まぶたの腫れ

眼瞼が大きく腫れたり、結膜がむくんだりすることがあります。

耳の前のリンパ節

耳の前のリンパ節が腫れ、押すと痛むことがあります。診断の参考になる所見です。

異物感・痛み

ゴロゴロするだけでなく、角膜障害を伴うと強い痛みや目を開けにくい症状が出ることがあります。

まぶしい・かすむ

角膜炎や角膜上皮下混濁が生じると、光がまぶしい、霧がかかったように見えるなどの症状が出ます。

反対の目にも広がる

最初は片眼だけでも、数日遅れて反対眼に症状が出ることがあります。目を触った手による自己感染にも注意が必要です。

発症
初期

充血・目やに・流涙・腫れ

感染力が強い時期です。家庭・学校・職場での感染拡大を防ぐ行動が重要です。

4〜7日
前後

角膜病変が出始めることがあります

角膜の点状病変や上皮障害が現れ、その後、角膜上皮下浸潤へ進む場合があります。

1〜3週
以降

結膜炎が改善しても角膜の濁りが残ることがあります

赤みや目やにが減っても、まぶしさ・かすみ・視力低下が続く場合は角膜を再評価します。

「治ってきた」と思ったころも注意|角膜混濁・角膜びらんなど

流行性角結膜炎では結膜だけでなく、透明な「黒目」である角膜にも炎症が及びます。 特に、多発性角膜上皮下浸潤(MSI)は見え方に影響する重要な合併症です。

角膜びらん

角膜表面の上皮がはがれた状態です。 強い異物感、痛み、涙、まぶしさを生じることがあります。

角膜上皮下混濁

発症後に角膜の浅い部分へ白い浸潤・混濁が生じます。 中心部に多いと視力低下や強いまぶしさの原因になります。

糸状物・糸状角膜炎

頻度は高くありませんが、強い眼表面障害に伴って角膜へ糸状物が付着し、 強いゴロゴロ感や痛みを生じることがあります。

偽膜・結膜癒着

炎症が強い場合、まぶたの裏側に白い偽膜が形成されることがあります。 重症例では結膜の瘢痕や癒着が残る可能性があります。

角膜混濁は「薬を使わなかったから必ず起こる」というものではありません

流行性角結膜炎そのものの免疫反応によって角膜上皮下浸潤は生じます。 ただし、角膜病変を確認せず放置したり、必要な治療や経過観察が行われなかったりすると、 混濁が長期化し、視力に影響することがあります。

反対に、ステロイド点眼薬を自己判断で開始・中止することも避けなければなりません。 病期、角膜所見、感染症の鑑別、眼圧などを確認しながら治療することが重要です。

アデノウイルス迅速抗原検査|いわゆる「アデノの検査」

何を調べる検査ですか?

結膜をぬぐった検体や涙液などから、アデノウイルス抗原を調べる迅速検査があります。 流行性角結膜炎が疑われる場合の診断補助として使用します。

陰性なら「はやり目ではない」?

いいえ。検体を採取する時期、採取量、ウイルス量などによって陰性になることがあります。 検査結果だけでなく、結膜の所見、角膜所見、耳前リンパ節、家族や職場での発症状況などを合わせて判断します。

検査だけで診察は終わりません。
視力、充血の状態、まぶたの裏側の偽膜、フルオレセイン染色による角膜上皮障害、 角膜上皮下浸潤などを細隙灯顕微鏡で確認することが重要です。

流行性角結膜炎の点眼治療|「全員に同じ目薬」ではありません

アデノウイルスそのものを確実に排除する一般的な特効薬はなく、 病期と角膜・結膜の状態に応じて治療を組み立てます。

人工涙液などによる眼表面の保護

異物感や刺激症状を軽減し、眼表面を保護します。 点眼容器を他の家族と共用してはいけません。

抗菌薬点眼

抗菌薬はアデノウイルスを治す薬ではありません。 角膜上皮障害が強い場合などに、細菌による二次感染の予防を目的として短期間使用することがあります。

ステロイド点眼

強い炎症、偽膜、糸状物、角膜上皮下浸潤などがある場合に検討します。 適切に使うことで角膜炎や混濁を抑えることが期待できます。

一方、眼圧上昇などの副作用があり、病型によってはステロイドが適さない感染症もあります。 自己判断で以前のステロイド点眼薬を使用しないでください。

遷延する角膜上皮下混濁

ステロイドを減らすと再燃する場合、治療抵抗性の場合、 あるいはステロイドで眼圧が上昇する場合には、別の治療が検討されることがあります。 使用する薬剤には保険適用外となるものもあるため、眼科医が慎重に判断します。

「赤みが引いたから点眼を全部やめる」「以前もらったステロイドを勝手に使う」は避けてください。
流行性角結膜炎では、結膜炎のピークと角膜病変が現れる時期が一致しないことがあります。 指示された再診時期に角膜を確認することが大切です。

感染対策|家族・学校・職場へ広げないために

アデノウイルスは感染力が強く、涙や目やにが付着した手指や物品を介して広がります。 症状がある間は「目に触れた手が感染源になる」と考えて行動してください。

石けんと流水で手洗い

目薬の前後、目やにを拭いた後、顔を触った後は丁寧に手を洗います。

タオルを共用しない

顔を拭くタオル、ハンカチ、枕などを家族と共用しないようにします。

目やには使い捨てで

目やにや涙はティッシュなどで拭き、そのまま廃棄してから手を洗います。

目薬を共用しない

家族で同じ点眼薬を使うと、容器を介した感染につながる可能性があります。

目をこすらない

感染を反対眼へ広げるだけでなく、炎症や角膜上皮障害を悪化させる可能性があります。

よく触る場所にも注意

ドアノブ、洗面所、スマートフォンなど、手で触れる場所を介した感染にも注意します。

コンタクトレンズを使用している方へ
急性期の装用は中止し、再開時期について眼科医の指示を受けてください。 強い痛みや角膜の白い点を認める場合は、アデノウイルス以外の感染性角膜炎も含めて確認が必要です。

学校や仕事は休む必要がありますか?

学校・幼稚園・保育施設

流行性角結膜炎は、学校保健安全法施行規則で「第三種」の学校感染症に位置づけられています。

出席停止の期間は一律に「○日間」ではなく、 病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めるまでが基準です。

自己判断で登校を再開せず、眼科医および学校の指示に従ってください。

仕事・職場

成人の仕事について、学校と同一の一律な出席停止規定がすべての職種に適用されるわけではありません。 しかし流行性角結膜炎は感染力が非常に強いため、感染性が高い時期は出勤を控える必要があります。

特に医療、介護、保育、接客など人との接触が多い仕事では、 医師の指示と勤務先の感染管理規定に従ってください。

日本眼科医会は、流行性角結膜炎では発病後およそ2週間は感染の危険があり、 発病から日が浅いほど感染リスクが高いとして、自宅療養と学校・職場を休むことを案内しています。 実際の復帰時期は症状・眼所見・仕事内容によって判断します。

このような症状があれば早めに再診してください

  • 赤みが改善してきたのに、見え方がかすむ
  • 光が以前より非常にまぶしい
  • 目を開けられないほど痛い
  • 黒目に白い点や濁りが見える
  • ゴロゴロ感・異物感が非常に強い
  • まぶたの裏に白い膜があると言われた
  • 点眼を減らすと、またかすみやまぶしさが出てきた
  • 片眼だけ極端に症状が強い

文献的考察|なぜ流行性角結膜炎は「再診」が大切なのか

1.角膜上皮下浸潤は結膜炎の後から現れる

2025年版「ウイルス性結膜炎診療ガイドライン」では、 多発性角膜上皮下浸潤(MSI)は発症後4〜5日頃から始まる角膜上皮病変から進展するとされています。 結膜炎が通常2〜3週間で改善する一方、角膜上皮下混濁は長期に残ることがあります。

2.適切なステロイド治療が必要になる病期がある

同ガイドラインでは、MSIが適切に治療されない場合、 小円形〜斑状の角膜上皮下混濁として数年以上残り、 視力障害の原因となる可能性が示されています。

一方でステロイド点眼薬はすべての急性結膜炎へ機械的に使用するものではありません。 急性期の高度炎症、偽膜・糸状物、MSIなど、所見を確認して使用を判断します。

3.角膜びらんや糸状物も起こり得る

大規模なEKC診療データでは、角膜上皮下浸潤だけでなく、 角膜上皮欠損や角膜糸状物も報告されています。 糸状物は頻度の高い典型所見ではありませんが、 強い眼表面障害では念頭に置くべき合併所見です。

4.迅速抗原検査は「陰性なら完全否定」ではない

アデノウイルス迅速抗原検査は診断に有用ですが、 検査の感度には限界があります。 そのため検査が陰性でも、典型的な結膜所見、角膜病変、耳前リンパ節、 家族内・職場内発症などを含めて総合的に診断する必要があります。

5.新しい治療のエビデンスはあるが、安易な自己治療はしない

ヨード系点眼や免疫抑制点眼などについても臨床研究があります。 ただし2025年版ガイドラインでは一部は弱い推奨であり、 保険適用外使用となる治療も含まれます。 患者さん自身が市販薬や残っている処方薬を組み合わせるのではなく、 病期と角膜所見を確認したうえで眼科医が判断します。

よくある質問

アデノウイルス検査が陰性なら仕事へ行ってよいですか?

検査が陰性でもアデノウイルス感染を完全には否定できません。 症状、結膜・角膜所見、周囲の流行状況を確認して判断します。 出勤については医師と勤務先の感染管理規定に従ってください。

赤みが治ったのに、まだかすんで見えます。なぜですか?

流行性角結膜炎では、結膜炎が改善した後も角膜上皮下浸潤が残り、 まぶしさ・かすみ・視力低下が続くことがあります。 角膜の診察を受けてください。

以前もらったステロイド点眼薬を使ってもよいですか?

自己判断では使用しないでください。 ステロイドが有効な角膜病変もありますが、 他の感染症との鑑別、病期、眼圧などを確認して使用する必要があります。

抗菌薬を点眼すればアデノウイルスは治りますか?

抗菌薬は細菌に対する薬で、アデノウイルスそのものを治す薬ではありません。 角膜上皮障害が強い場合などに二次的な細菌感染を防ぐ目的で使用する場合があります。

学校は何日休めばよいですか?

一律に何日という規定ではありません。 流行性角結膜炎は第三種の学校感染症で、 学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止となります。

強い充血・目やに・痛み・かすみは有田眼科へご相談ください

福岡市中央区小笹の有田眼科では、充血や目やにの診察だけでなく、 結膜、角膜、まぶたの裏側まで確認し、感染症とその他の結膜炎・角膜疾患を鑑別します。

流行性角結膜炎が疑われる場合は、来院時に感染対策が必要になることがあります。 受診方法について不明な点があればお問い合わせください。

電話 092-707-2132 有田眼科の感染症診療を見る

有田眼科 有田 量一
〒810-0033 福岡県福岡市中央区小笹2丁目2-3

主な参考資料

日本眼科学会
ウイルス性結膜炎診療ガイドライン(2025年版)
厚生労働省
流行性角結膜炎―感染症法に基づく届出基準
日本眼科医会
ウイルス性結膜炎
国立感染症研究所
流行性角結膜炎/アデノウイルス感染対策
学校保健安全法施行規則
第三種感染症および出席停止期間の基準
Journal literature
Epidemic keratoconjunctivitis: clinical profile and corneal complications / adenoviral pseudomembranous conjunctivitis / diagnostic accuracy of rapid adenovirus antigen testing.