強度近視がある方の白内障手術は、
水晶体だけでなく「目の長さ」と「網膜」まで確認します
強度近視の方では、眼球の前後方向の長さである 「眼軸長」が長くなっていることがあります。 白内障手術そのものは検討できますが、 一般的な目よりも網膜・黄斑の病気に注意が必要で、 眼内レンズの度数計算や術後のピント位置についても 慎重に考える必要があります。
有田眼科では、白内障の程度だけでなく、 眼軸長、角膜、散瞳眼底検査、黄斑OCT、 網膜周辺部、反対眼とのバランスなどを確認して 白内障手術を計画します。
大切なのは、白内障を取り除くことだけではなく、 長い眼軸に合った眼内レンズ度数を考え、 網膜・黄斑の状態を確認し、 手術後も網膜の注意症状を知っておくことです。
強度近視では「眼鏡の度数」だけでなく、眼軸長を確認します
近視には複数の要因がありますが、 強度近視では眼球が前後方向に長くなっている 「軸性近視」が関係していることがあります。
一般的な眼軸
角膜から網膜までの距離に合わせて、 角膜と水晶体で光を網膜上へ集めます。
比較
眼軸が長い近視
眼球の前後径が長くなることで、 光の焦点が網膜より手前に合いやすくなります。 眼球後方の網膜・脈絡膜にも変化が生じることがあります。
そのため白内障手術では、 「眼鏡が-何Dか」だけで眼球の状態を判断せず、 実際に眼軸長を測定します。
強度近視があると、白内障手術で確認するポイントが増えます
眼軸長
眼内レンズの度数計算に重要です。 強度近視では非常に長い眼軸となっている場合があります。
網膜周辺部
強度近視では網膜裂孔や網膜剥離などに注意が必要です。 散瞳して周辺網膜まで確認します。
黄斑
強度近視に伴う黄斑の変化があると、 白内障手術後の視力や見え方へ影響する可能性があります。
術後のピント
長年近視だった方では、 裸眼で近くを見る生活に慣れている場合があります。 術後にどの距離へ合わせるかを事前に相談します。
遠方を裸眼で見たい方もいれば、 近くを見るときの裸眼視力をある程度残したい方もいます。 反対眼の度数と生活スタイルも含めて考えます。
強度近視がある方の白内障手術前に確認する検査
白内障を確認するだけではなく、 眼内レンズの度数計算と、 白内障の奥にある網膜・黄斑・視神経まで評価します。
視力・屈折検査
現在の裸眼視力と矯正視力、 近視・乱視の程度を確認します。 白内障による度数変化も考慮します。
眼軸長測定
角膜表面から網膜までの目の長さを測定します。 眼内レンズ度数を決めるうえで中心となる測定値です。
角膜曲率・角膜形状・乱視
角膜のカーブや乱視を測定し、 眼内レンズ度数と乱視矯正の計画に利用します。
散瞳眼底検査
瞳孔を広げ、 黄斑、視神経だけでなく 網膜周辺部に裂孔・変性・剥離がないか確認します。
黄斑OCT
黄斑を断層画像で確認します。 強度近視では白内障とは別に、 黄斑の形態変化が見え方へ影響していないか確認することが重要です。
必要に応じて視神経・視野
強度近視では視神経乳頭の形が通常と異なることもあります。 緑内障などが疑われる場合はOCTや視野検査を追加します。
強度近視では、白内障手術前に網膜を確認することが重要です
眼軸が長い強度近視では、 網膜・脈絡膜が引き伸ばされ、 網膜裂孔や網膜剥離、 黄斑部の病変などに注意が必要です。
網膜に裂け目がないか確認します
網膜周辺部に裂け目がある場合は、 その周囲の状態や網膜剥離を伴っていないか確認します。
治療が必要と判断される裂孔では、 白内障手術より先に網膜光凝固などを検討する場合があります。
強度近視は裂孔原性網膜剥離のリスク因子の一つです
網膜裂孔から液体が入り、 網膜が剥がれている場合は 通常の予定白内障手術より網膜治療を優先することがあります。
中心部の見え方はOCTで確認します
強度近視では、 黄斑部に萎縮や牽引性の変化などが生じる場合があります。
白内障だけを取り除いても、 黄斑の障害による視力低下やゆがみが残る可能性があります。
飛蚊症・光視症がある場合は特に確認します
硝子体が網膜から離れる際に網膜が引っ張られ、 網膜裂孔が形成される場合があります。
飛蚊症が急に増えた、光が走るといった症状がある場合は 手術予定日まで待たずに眼底検査を受けることが重要です。
網膜周辺部の状態を確認し、 網膜裂孔など実際の所見に応じて 網膜光凝固が必要かどうかを判断します。
長い眼軸では、眼内レンズの度数計算も重要です
白内障手術では、 濁った水晶体を取り除いたあとに 患者さんごとの眼内レンズを挿入します。
眼内レンズ度数の計算では、 眼軸長、角膜の屈折力、 前眼部の測定値などを使用します。 強度近視で眼軸が長い目では、 通常の眼軸とは度数計算の条件が異なるため、 測定値と目の形を慎重に確認します。
眼軸長
角膜から網膜までの距離。 強度近視の白内障手術では特に重要な測定値です。
角膜曲率
角膜の屈折力を測定し、 眼軸長と合わせて眼内レンズ度数計算へ使用します。
目標とする屈折
遠く・中間・近くのどの距離を 主に見やすくしたいかを相談したうえで 目標度数を考えます。
OA-2000では白内障術前検査に必要な眼軸長や 角膜曲率などを測定します。 強い白内障などで光学式測定が難しい場合には、 目の状態に応じて追加の確認が必要になることがあります。
眼内レンズ度数は術前の測定値から予測します。 特に特殊な眼軸長では計算式によって誤差傾向が異なるため、 手術後にある程度の近視・遠視・乱視が残る可能性があります。
強度近視の方では「手術後、どの距離を裸眼で見たいか」が特に重要です
長年強い近視だった方は、 眼鏡を外すと顔の近くの文字を読めることに 慣れている場合があります。
白内障手術で遠方へピントを合わせると、 遠くは見やすくなる一方、 これまで眼鏡を外して見えていた近距離には 老眼鏡などが必要になることがあります。
運転、テレビ、屋外活動などを 裸眼で見やすくしたい場合に検討します。
単焦点眼内レンズでは、 近くを見るときに眼鏡が必要になることがあります。
パソコン、家事など、 中間距離を重視する生活もあります。
実際に必要な距離を確認して 目標を相談します。
長年、眼鏡を外して近くを見る生活をしてきた方では、 近方の裸眼視力を残すことを希望する場合があります。
反対眼とのバランスも含めて検討します。
運転、読書、スマートフォン、パソコン、 趣味、仕事、眼鏡を使える場面などを確認すると、 手術後のピント位置を考えやすくなります。
片眼だけ先に手術する場合は、反対眼との度数差も考えます
両眼とも強度近視があり、 片眼だけ先に白内障手術を行う場合、 手術した目と手術していない目の度数差が 大きくなることがあります。
そのため、 一眼目の目標度数を決めるときには、 反対眼の視力・度数・白内障の程度、 コンタクトレンズを使用できるか、 二眼目の手術予定なども考慮します。
有田眼科では、 眼内レンズ度数だけでなく 患者さんが希望するピント位置と反対眼とのバランスも 手術前に確認します。
強度近視でも、白内障手術そのものの基本的な流れは同じです
白内障手術では、 濁った水晶体を包んでいる水晶体嚢の前面を円形に開き、 超音波で水晶体を細かくして吸引し、 残した水晶体嚢へ眼内レンズを挿入します。
強度近視だから別の白内障手術を行うというより、 術前の眼軸長測定、網膜評価、 眼内レンズ度数計算、術後の網膜経過観察を より意識することが重要です。
白内障を取り除く
水晶体の硬さや目の状態に合わせて 超音波と吸引を調整します。
眼内レンズを挿入
術前に測定した眼軸長などから 計算した眼内レンズを挿入します。
術後も網膜を意識
手術直後だけでなく、 飛蚊症や光視症などが生じた場合は 網膜の状態を確認します。
強度近視と白内障手術後の網膜剥離について
強度近視は、 もともと裂孔原性網膜剥離のリスク因子の一つです。 また、白内障手術後にも網膜剥離が起こる可能性があります。
だからといって、 強度近視の方が白内障手術を受けると 必ず網膜剥離になるわけではありません。
大切なのは、 手術前に周辺網膜を確認し、 手術後も飛蚊症・光視症・視野の影などが出た場合に 早く眼底検査を受けることです。
手術前
散瞳して網膜周辺部を確認し、 網膜裂孔や網膜剥離がないかを調べます。
手術後
視力だけでなく、 飛蚊症や光視症などの症状にも注意します。
時間がたってから
網膜剥離は手術直後だけに起こるものではありません。 後から症状が出た場合も早めに診察を受けます。
網膜裂孔は後から生じることがあります。 新しい飛蚊症や光視症、 カーテン状の視野異常があれば、 過去の検査結果にかかわらず受診してください。
強度近視の方|白内障手術後に早めに受診したい症状
次のような症状が出た場合は、 単なる「手術後の見え方の変化」と決めつけず、 網膜裂孔・網膜剥離などがないか確認する必要があります。
- 黒い点や糸くずのような影が急に増えた
- 黒い煙・ススのようなものが急に広がった
- 稲妻のような光が繰り返し見える
- 視野の端からカーテンのような影が広がる
- 視野の一部が急に欠けた
- 急に視力が低下した
- 中心部が急にゆがむ、暗くなる
次回の定期診察まで待たず、 診療時間内は有田眼科へご連絡ください。 診療時間外で急激な視力低下や視野異常がある場合は、 救急対応可能な医療機関への受診をご検討ください。
白内障を取っても見え方が十分改善しない場合に考える黄斑・網膜の病気
強度近視では、 網膜剥離だけでなく黄斑部の状態にも注意が必要です。
近視性黄斑変性
強度近視に伴う黄斑部の萎縮や 血管の異常などによって、 中心視力が低下することがあります。
近視性牽引黄斑症
長く変形した眼球後方で、 網膜が牽引され、 黄斑部に分離などの変化が生じる場合があります。
黄斑円孔など
中心部がゆがむ、欠けるなどの症状がある場合は、 白内障とは別に黄斑OCTで確認します。
手術前に黄斑の状態を確認することで、 白内障手術で改善を期待できる部分と 網膜疾患によって残る可能性がある見えにくさを できるだけ分けて説明します。
強度近視がある方の眼内レンズ選び
単焦点、多焦点、焦点深度拡張型、 乱視矯正用など眼内レンズには複数の選択肢があります。
ただし強度近視では、 網膜・黄斑・視神経などの状態によって 見え方の質に影響する可能性があるため、 「近視が強いからこのレンズ」と 一律には決めません。
「どこへピントを合わせるか」と 「どのタイプの眼内レンズを使うか」は別の問題です。 まず網膜を含む目の状態を確認したうえで、 生活に合ったピント位置と眼内レンズを検討します。 製品ごとの詳しい比較は眼内レンズ専用ページでご案内します。
強度近視と白内障手術についてよくある質問
強度近視でも白内障手術はできますか?
手術を検討できる場合があります。 ただし、眼軸長、網膜周辺部、黄斑、 視神経などを確認し、 一般的な白内障だけの目とは異なる注意点を整理します。
近視が何Dなら「強度近視」ですか?
強度近視には屈折度数などによる定義がありますが、 白内障が進行すると眼鏡の度数自体が変化する場合があります。 白内障手術を考える際には、 眼鏡の度数だけでなく眼軸長と眼底の状態を確認することが重要です。
強度近視だと白内障手術後に網膜剥離になりやすいですか?
強度近視や長い眼軸は、 網膜剥離のリスクに関係することが知られています。 ただし手術を受ければ必ず起こるものではありません。 手術前の網膜検査と、 術後の飛蚊症・光視症・視野異常への注意が重要です。
網膜裂孔が見つかったら白内障手術はできませんか?
裂孔の状態によります。 網膜剥離へ進行する危険性などを確認し、 必要な場合には網膜光凝固などを先に行ってから 白内障手術の時期を検討します。
強度近視なら手術前に全員レーザーを受けた方がいいですか?
強度近視という理由だけで 全員に同じ網膜レーザーを行うわけではありません。 散瞳眼底検査で網膜の状態を確認し、 実際の所見に応じて治療が必要かを判断します。
白内障手術をすれば強い近視もなくなりますか?
眼内レンズによって術後の屈折状態を変えることはできますが、 長くなった眼球そのものが短くなるわけではありません。 網膜や黄斑に関係する強度近視のリスクも、 白内障手術によってすべてなくなるわけではありません。
近視を完全にゼロへ合わせた方がいいですか?
一律には決まりません。 遠方を裸眼で見たいのか、 これまでのように近くを裸眼で見たいのか、 反対眼とのバランスなどを確認して相談します。
強度近視では眼内レンズの度数がずれやすいですか?
眼軸が非常に長い目では、 眼内レンズ度数計算式による予測誤差に注意が必要です。 眼軸長、角膜曲率などを測定して度数を計算しますが、 手術後の度数が計算値と完全に一致することを 保証することはできません。
強度近視でも多焦点眼内レンズを選べますか?
近視の度数だけで一律に決めるものではありません。 黄斑、網膜、視神経、角膜などを確認し、 多焦点眼内レンズの特性がその目に合うかを判断します。
以前LASIKを受けています。強度近視の白内障手術で伝える必要がありますか?
はい。 LASIKなどの角膜屈折矯正手術後は 角膜の屈折力が変化しているため、 眼内レンズ度数計算に追加の情報や測定が 必要になる場合があります。 過去の手術資料があればお持ちください。
手術後に飛蚊症が増えたら、次の予約まで待ってよいですか?
急に飛蚊症が増えた、 光が走る、 カーテンのような影が見える場合は、 次回予約を待たずにご相談ください。 網膜裂孔・網膜剥離などの確認が必要です。
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有田眼科 院長 有田 量一
〒810-0033 福岡県福岡市中央区小笹2丁目2-3