白内障手術では、濁った水晶体を取り除くだけでなく、 手術後に「どの距離を裸眼で見やすくするか」を考えて眼内レンズの度数を決めます。 遠くに合わせるだけでなく、生活によってはあえて近視を少し残すという選択もあります。
白内障手術は「濁りを取る手術」であると同時に、術後のピントを決める手術です
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを挿入します。 この眼内レンズには度数があり、術前の眼軸長や角膜のカーブなどを測定して、 手術後の屈折状態を予測しながらレンズ度数を選びます。
ここで大切なのが、単に「視力を良くする」だけではなく、 裸眼でどの距離を見たいのかという目標です。 単焦点眼内レンズの場合、基本的には一つの距離を中心にピントを設定するため、 その選択が術後の眼鏡の使い方にも影響します。
単焦点・多焦点・焦点深度拡張型・乱視矯正などのレンズの種類と、 術後に遠視・正視・近視のどこを目標にするかは同じ問題ではありません。 まず目の状態を確認し、そのうえで生活に合う組み合わせを考えます。
「近視を残す」とは、どういうことですか?
一般に「近視を残す」とは、白内障手術後の屈折を完全な正視付近にせず、 意図的に近視側へ設定することを指します。 その目的は「見えにくくすること」ではなく、 近くや中間距離を裸眼で使いやすくすることです。
遠くに合わせる
遠方の裸眼視力を重視する考え方です。 単焦点眼内レンズでは、近くを見る際に老眼鏡などが必要になることがあります。
軽い近視を残す
遠くを多少犠牲にして、パソコンや室内など中間距離を使いやすくすることを目指します。 必要な距離は生活によって異なります。
より近くを重視する
読書やスマートフォンなどを裸眼で見たい方では、 さらに近視側を目標にすることを検討する場合があります。 その場合、遠方用眼鏡が必要になります。
例えば「−2Dなら単純計算上は約50cm付近」という考え方はできますが、 実際の見え方は眼内レンズ、乱視、瞳孔、角膜、網膜、視神経などによって変わります。 「何Dにしたい」ではなく、「何cmくらいの物を普段裸眼で見たいか」を伝える方が相談しやすくなります。
近視を残すことを検討しやすいのは、このような方です
長年、近視で生活してきた方
強い近視の方などでは、眼鏡を外して顔の近くの文字を見ることが 長年の習慣になっていることがあります。 手術後に遠くへピントを合わせると、 これまで裸眼で見えていた近距離に眼鏡が必要になる可能性があります。
近くや中間距離を使う時間が長い方
読書、スマートフォン、パソコン、料理、裁縫、楽器、細かな手作業など、 普段の生活で使う距離を具体的に確認することが重要です。
必要なときは遠方用眼鏡を使ってもよい方
「眼鏡を一切使いたくない」のではなく、 運転や映画など遠くを見る場面では眼鏡を使ってもよいという方では、 近くを重視する考え方が選択肢になることがあります。
多焦点眼内レンズが適さない、または希望しない方
網膜・黄斑・視神経などの状態や生活上の希望によっては、 多焦点ではなく単焦点眼内レンズを選び、 ピント位置を工夫することを検討する場合があります。
近視を残すメリットだけでなく、遠くがぼやけることも理解して選びます
近視を残すと、近くや中間距離が裸眼で使いやすくなる可能性がありますが、 その分、遠くは裸眼ではぼやけます。 「近くも遠くも眼鏡なしで完全に見える」という意味ではありません。
期待できること
- 眼鏡を外して近くを見る習慣を残せる可能性がある
- パソコンや室内作業を裸眼で行いやすくなる場合がある
- 生活に合わせて単焦点レンズのピント位置を調整できる
理解しておきたいこと
- 遠方を見るときに眼鏡が必要になることがある
- 予定した度数と術後の度数が完全に一致するとは限らない
- 残った乱視によって見え方が変わる
- 網膜や視神経の病気があれば、白内障以外の影響が残る
左右の目をどう合わせるかも重要です
白内障手術では、一眼だけの数字ではなく、 両眼でどのように生活するかを考える必要があります。
両眼とも同じように近視を残す方法
両眼とも近くや中間距離を重視し、 遠方を見る際には眼鏡を使用する考え方です。 長年近視だった方にとって違和感が少ない場合があります。
左右でピントを少し変える方法
一眼を遠方、反対眼を近視側へ設定し、 両眼を使って見える範囲を広げる「モノビジョン」「ミニモノビジョン」という考え方もあります。 ただし左右差への慣れ方には個人差があり、すべての方に適する方法ではありません。
反対眼に強い近視が残っている状態で手術眼だけ遠方へ合わせると、 左右の度数差が大きくなり、眼鏡が使いにくくなる場合があります。 反対眼の白内障の程度や今後の手術予定まで含めて考えます。
強度近視の方は「近視を残すか」だけでなく、網膜まで確認します
強度近視では眼球の前後方向が長くなっている場合があり、 眼内レンズの度数計算だけでなく、網膜や黄斑の状態にも注意が必要です。
白内障手術で眼内レンズを入れて近視を軽くしても、 長くなった眼球そのものが短くなるわけではありません。 強度近視に関連する網膜・黄斑のリスクがなくなるわけでもありません。
- 眼軸長
- 角膜曲率・乱視
- 黄斑OCT
- 散瞳眼底検査・網膜周辺部
- 反対眼との度数バランス
強度近視がある方については、 下の関連ページで詳しく解説しています。
手術前に考えておきたい「5つの質問」
裸眼で一番見たい距離は?
遠く、テレビ、パソコン、料理、スマートフォン、本など、具体的な距離を考えます。
運転をしますか?
日中だけか、夜間運転も多いかなど、遠方視力が必要な場面を確認します。
どんな時なら眼鏡を使えますか?
遠く用・近く用のどちらなら眼鏡を使っても困らないかを整理します。
今まで近くを見る時は?
眼鏡を外して読む習慣がある方は、その生活を手術後も残したいか考えます。
反対眼はどうする予定?
左右の度数差、反対眼の白内障、二眼目の手術予定まで含めて考えます。
白内障手術で近視を残すことについて、よくある質問
白内障手術では近視をゼロにした方がよいですか?
一律には決まりません。遠方を裸眼で見たい方もいれば、 これまでのように近くを裸眼で見たい方もいます。 普段見る距離、眼鏡への考え方、反対眼とのバランスを確認して決めます。
近視を残すと手術が失敗したということですか?
意図して近視側を目標にした場合は、失敗という意味ではありません。 手術前に設定した目標屈折として、近方・中間距離を重視している場合があります。 ただし予定外に大きな度数ずれが生じた場合は、術後の状態を確認します。
−2Dにすれば50cmが必ず見えますか?
−2Dでは単純計算上、焦点距離は約50cmですが、 50cmが必ず鮮明に見えることを保証する数字ではありません。 乱視、角膜、網膜、視神経、瞳孔、眼内レンズの特性などでも見え方は変わります。
片方を遠く、片方を近くにできますか?
一眼を遠方、反対眼を近視側にするモノビジョンという方法があります。 ただし左右差への適応、立体感、夜間運転などを考慮する必要があり、 全員に適する方法ではありません。
強度近視ですが、近視を残すことはできますか?
選択肢になる場合があります。 ただし強度近視では眼軸長、眼内レンズ度数計算、網膜・黄斑の状態、 反対眼とのバランスなどを確認したうえで個別に検討します。
関連する有田眼科のページ
「遠くに合わせるか、近視を残すか」も手術前に相談できます
白内障手術後の見え方は、眼内レンズの名前だけで決まるものではありません。 有田眼科では、眼軸長や角膜、網膜・黄斑・視神経などを確認し、 運転、仕事、読書、パソコン、スマートフォンなど普段の生活を伺いながら、 術後にどの距離を見やすくしたいかを相談します。
白内障手術について確認する 092-707-2132
有田眼科 院長 有田 量一
〒810-0033
福岡県福岡市中央区小笹2丁目2-3
本記事は一般的な医療情報です。 実際の眼内レンズ度数、目標屈折、手術適応は、 眼の状態・反対眼・生活背景などを確認して個別に判断します。