同じ白内障手術でも、
目の状態によって「難しさ」は大きく異なります
白内障が非常に進んで硬くなっている、 瞳孔が十分に開かない、 水晶体を支えるチン小帯が弱い——。 このような目では、通常の白内障手術より慎重な操作や 追加の処置が必要になることがあります。 有田眼科では、白内障の濁りだけでなく、 瞳孔、水晶体嚢、チン小帯、角膜、眼底、 過去の眼科手術や服用薬まで確認して手術計画を立てます。
「難しい白内障手術」とは、手術時間が長いという意味だけではありません
白内障手術は、濁った水晶体を取り除いて眼内レンズを挿入する手術です。 しかし、水晶体の硬さ、瞳孔の大きさ、 水晶体を支える組織の強さなどは患者さんごとに異なります。
「見えにくい」ことと手術難度は同じではない
視力がかなり低下していても比較的通常の方法で手術できることがあります。 反対に、視力が保たれていても、 チン小帯や瞳孔などの問題で慎重な操作が必要な場合があります。
術前検査ですべて分かるとは限らない
チン小帯の弱さなどは、 診察で予測できる場合もあれば、 実際に水晶体嚢へ触れた時点で初めて明らかになることもあります。
必要なら計画を変更することも手術の一部
術前に予定した方法へ固執せず、 その時点の目の状態に合わせて操作や 眼内レンズの固定方法を変更する場合があります。
手術時間は白内障の硬さや目の状態によって変わります。 難しい目では、急ぐことより一つひとつの操作を確認して 安全性を優先することが重要です。
白内障手術の難易度が高くなる主な状態
次の状態があるから手術できない、という意味ではありません。 どの部分に注意が必要かを術前に把握し、 必要な準備をしておくことが重要です。
水晶体を細かくするための操作が増えることがあります
白内障が進行すると水晶体核が硬くなり、 超音波で分割・吸引するために通常より多くの操作が必要になる場合があります。
超音波エネルギーや眼内操作が増えるほど 角膜内皮など周囲組織への負担も考える必要があるため、 水晶体の硬さに合わせて手術設定や操作方法を調整します。
水晶体嚢の境界が見えにくいことがあります
水晶体全体が白く濁ると、 通常の白内障で手術操作の目印になる赤い反射が弱くなり、 水晶体嚢の状態を確認しにくい場合があります。
水晶体嚢の圧力や濁り方にも注意しながら、 前嚢を開く操作を慎重に進めます。
手術で見える範囲が狭くなります
瞳孔が十分に開かないと、 水晶体の周辺部が見えにくくなり、 前嚢切開や水晶体の分割・吸引を行うスペースが狭くなります。
必要に応じて薬剤や瞳孔を広げる補助方法を検討します。
水晶体嚢そのものが動きやすくなります
チン小帯は水晶体を周囲から支えている細い線維です。 弱くなっていると、水晶体嚢を操作した際に 袋全体が揺れたり偏ったりすることがあります。
広い範囲で弱い場合は、 通常と同じ位置へ眼内レンズを安定して固定できない可能性もあります。
小瞳孔とチン小帯脆弱の両方に注意します
落屑症候群では、 瞳孔が十分に開きにくかったり、 水晶体を支えるチン小帯が弱くなっていたりする場合があります。
白内障手術前には瞳孔の開き方、 水晶体の揺れ、眼圧、緑内障の有無なども確認します。
術後の角膜浮腫に注意します
角膜内皮細胞は角膜を透明に保つために重要な細胞です。 もともとの細胞数が少ない場合は、 白内障手術後に角膜のむくみが長く続く可能性があります。
手術前に角膜の状態を確認し、 眼内操作や超音波による負担を考えながら手術します。
外から見えない支持組織の障害が残っている場合があります
以前目を強くぶつけたことがある場合、 チン小帯や虹彩、水晶体嚢などが損傷していることがあります。
昔のけがでも白内障手術へ影響することがあるため、 手術前の診察でお伝えください。
目の構造が変化している場合があります
過去に硝子体手術などを受けている目では、 水晶体や水晶体嚢の動き方などが通常と異なる場合があります。
何の手術を、いつ、どちらの目に受けたかを確認します。
チン小帯が弱い白内障手術では、「袋を守る」ことが特に重要です
白内障手術では、水晶体の中身だけを取り除き、 外側の薄い袋である水晶体嚢を残します。 通常はこの袋の中へ眼内レンズを入れます。 その袋を周囲から支えているのがチン小帯です。
水晶体が揺れる
チン小帯が弱いと、 診察時に水晶体の揺れが確認できる場合があります。 ただし軽い脆弱性は術前に明らかでないこともあります。
前嚢切開で分かることも
手術開始後、水晶体嚢を開く際に 嚢全体が動くことで、 初めてチン小帯の弱さが分かる場合があります。
吸引中にも負担を減らす
水晶体皮質を吸引するときには、 弱いチン小帯へ引っ張る力が集中しないよう、 水晶体嚢の状態を確認しながら操作します。
代表的な器具として水晶体嚢拡張リング (Capsular Tension Ring:CTR)などがあります。 CTRはチン小帯の脆弱・断裂が疑われる、 または確認された白内障手術で 水晶体嚢を安定させる目的で使用される医療機器です。
水晶体嚢の中へ安全に眼内レンズを固定できないと判断した場合は、 その時点の目の状態を優先し、 別の位置・方法による眼内レンズ固定や追加手術を検討します。 眼内レンズ製品の詳細は別の眼内レンズページで説明します。
瞳孔が小さい白内障手術と、前立腺の薬に関係するIFIS
白内障手術では、散瞳薬を使って瞳孔を広げ、 その奥にある水晶体を手術します。 瞳孔が十分に開かない場合は術野が狭くなり、 虹彩への負担にも注意が必要です。
瞳孔が開きにくい場合
- 落屑症候群
- 長期間の緑内障点眼
- ぶどう膜炎などの炎症歴
- 虹彩の癒着
- 過去の眼科手術
- 一部の内服薬の影響
IFISとは
IFISは「術中虹彩緊張低下症候群」のことで、 手術中に虹彩が柔らかく動きやすくなり、 瞳孔が縮んだり、 虹彩が切開創側へ動きやすくなったりする状態です。
α1遮断薬を現在使用している方だけでなく、 過去に使用したことがある方でも関連が報告されています。
前立腺肥大症などの薬を飲んだことがある方へ
タムスロシン、シロドシン、ナフトピジルなどの α1遮断薬では、白内障手術時のIFISとの関連が報告されています。
現在飲んでいる薬だけでなく、 以前飲んでいた薬についても分かる範囲でお知らせください。 薬を自己判断で中止するのではなく、 服用歴を眼科医へ伝えておくことが重要です。
硬い白内障では、角膜への負担も考えながら手術します
超音波乳化吸引術では、 水晶体核を超音波で細かくしながら吸引します。 白内障が硬いほど、通常より多くの超音波エネルギーが 必要になる場合があります。
水晶体を適切に分割
大きく硬い水晶体核をそのまま処理せず、 状態に応じて分割し、 一つずつ安全に吸引できるよう操作します。
超音波を必要以上に増やさない
水晶体の硬さに合わせ、 超音波と吸引・灌流の設定を調整しながら手術します。
眼内を安定させる
目の中へ入る灌流液と吸引のバランスを保ち、 前房を安定させながら操作することが重要です。
手術装置による超音波、灌流、吸引などを 目の状態に合わせて調整しながら手術操作を行います。 装置そのものだけで手術結果が決まるわけではなく、 術前評価と術中操作を組み合わせることが大切です。
難しい白内障ほど、一つひとつの手術操作を確認します
白内障手術では各工程が次の操作につながっています。 難症例では、予定どおり進めることよりも、 その時点で水晶体嚢・チン小帯・虹彩が どのような状態かを確認しながら進めることが重要です。
切開位置と前房の安定性を確認
角膜や前房の状態を確認し、 器具を安定して操作できるよう切開を作ります。
前嚢切開で水晶体嚢の安定性を見る
前嚢を円形に開きながら、 水晶体嚢が過度に動かないか、 チン小帯が弱くないかを確認します。
水晶体を無理に動かさない
硬い水晶体やチン小帯が弱い目では、 回転などの操作によって支持組織へ過度な力がかからないよう配慮します。
超音波と吸引を状態に合わせて調整
白内障の硬さ、前房の状態、 水晶体嚢の安定性などを見ながら 水晶体を少しずつ処理します。
残った水晶体皮質を丁寧に除去
特にチン小帯が弱い場合は、 水晶体嚢を強く引っ張らないようにしながら 残存皮質を吸引します。
眼内レンズを入れる前に水晶体嚢を再確認
水晶体嚢とチン小帯が十分に安定しているか確認し、 予定どおりの位置へ眼内レンズを固定できるか判断します。
目の安全性を優先し、 手術中の所見に応じて補助器具の使用、 手術方法、眼内レンズの固定方法などを変更する場合があります。
手術中に予定外の状態が分かった場合
詳しい術前検査を行っても、 水晶体嚢やチン小帯の強さを完全に予測することはできません。 予定外の状態が生じたときは、 「予定どおり終えること」ではなく、 その時点で安全性の高い処置を選ぶことを優先します。
後嚢が破れた場合
眼内レンズを支える水晶体嚢の後面に 裂け目が生じることを後嚢破損といいます。
硝子体が前方へ出てきた場合は 硝子体への追加処置が必要となり、 眼内レンズの固定位置も変更する場合があります。
チン小帯が切れた場合
障害の範囲を確認し、 水晶体嚢を安定させる方法や、 眼内レンズをどこへ固定するかを再検討します。
水晶体の一部が硝子体側へ落下した場合
水晶体核や皮質の一部が眼球後方へ落下した場合には、 硝子体手術による追加処置が必要になることがあります。
眼内レンズを予定位置へ入れられない場合
水晶体嚢の支持が不足している場合は、 無理に予定どおりの場所へ入れず、 目の状態に合わせて固定方法を変更します。
白内障手術だけでなく、硝子体手術まで考えられる体制
有田眼科では、白内障手術に加えて 網膜硝子体手術にも対応しています。
白内障手術中に硝子体への追加処置が必要になった場合や、 水晶体の一部が後方へ落下した場合など、 目の後方まで治療が必要となる状態も考えながら手術計画を立てます。 病状や緊急性によっては連携医療機関での治療が必要になることもあります。
昔の病気や手術、現在は飲んでいない薬も教えてください
難しい白内障を術前に予測するためには、 目を見る検査だけでなく患者さんの過去の情報も重要です。
目について伝えてほしいこと
- 過去に目を強くぶつけたことがある
- 硝子体手術など眼内手術を受けた
- 緑内障で治療している
- ぶどう膜炎など目の炎症歴がある
- 過去の手術で問題があった
薬について伝えてほしいこと
- 現在飲んでいる前立腺肥大症の薬
- 以前使用していた前立腺肥大症の薬
- 緑内障点眼薬
- ステロイド薬
- その他のお薬手帳に記載されている薬
α1遮断薬は過去の服用歴がある患者さんでも IFISとの関連が報告されています。 大切なのは患者さん自身で中止することではなく、 服用歴を眼科医へ伝え、手術前から準備できるようにすることです。
難しい白内障では、通常より手術時間が長くなることがあります
硬い白内障を少しずつ処理する、 小さな瞳孔へ追加の処置を行う、 チン小帯が弱い水晶体嚢を安定させるなど、 必要な工程が増えれば手術時間も長くなる場合があります。
大切なのは「何分で終わるか」だけではありません。 目の状態に応じて必要な操作を行い、 安全性を優先して進めることが重要です。
有田眼科では点眼麻酔と前房内麻酔を組み合わせ、 強い不安がある方には全身状態を確認したうえで 笑気吸入鎮静または静脈内鎮静を検討しています。
難しい白内障手術についてよくある質問
白内障がかなり進んでいても手術できますか?
進行した白内障でも手術を検討できます。 ただし水晶体が非常に硬くなっている場合や、 水晶体嚢の状態に問題がある場合は、 通常より慎重な操作や別の手術方法が必要になることがあります。
「白内障が硬い」と言われました。何が違うのですか?
水晶体核が硬いほど、 超音波で分割・吸引するための操作が増える場合があります。 角膜などへの負担も考えながら、 超音波と吸引を調整して手術します。
瞳孔が開きにくくても白内障手術はできますか?
手術できる場合があります。 瞳孔の大きさや原因を確認し、 必要に応じて薬剤や瞳孔を広げるための追加処置を検討します。
落屑症候群があると白内障手術は危険ですか?
落屑症候群では小瞳孔やチン小帯の脆弱性を伴うことがあり、 通常より慎重な手術が必要になる場合があります。 落屑症候群があるだけで手術できないという意味ではありません。
チン小帯が弱いかどうかは手術前に分かりますか?
水晶体の揺れなどから術前に予測できることがあります。 一方、軽度の脆弱性は手術中に初めて明らかになる場合もあります。 そのため術中の状態を確認しながら手術方法を調整します。
前立腺の薬を飲んでいます。白内障手術前に止めた方がいいですか?
自己判断で中止しないでください。 α1遮断薬ではIFISとの関連が報告されていますが、 過去の服用歴も含めて眼科医へ伝えることが重要です。 お薬手帳をお持ちください。
手術中に水晶体の袋が破れたら失敗ですか?
後嚢破損は白内障手術で起こり得る合併症の一つです。 起きた場合には硝子体への処置や 眼内レンズの固定位置変更など、 その状態に適した対応が必要になります。 合併症が起きたことだけで最終的な結果が決まるわけではなく、 その後の適切な対応と経過観察が重要です。
手術時間が長いと、手術がうまくいっていないということですか?
そうとは限りません。 硬い白内障、小瞳孔、チン小帯脆弱などでは 必要な操作が増えるため、時間が長くなる場合があります。 手術時間だけで手術の質を判断することはできません。
昔、目をぶつけたことがあります。関係ありますか?
関係する可能性があります。 外傷によってチン小帯や虹彩などに障害が残っていることがあります。 何年も前の外傷でも、白内障手術前にお伝えください。
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有田眼科 院長 有田 量一
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