「多焦点眼内レンズは選定療養なので、確定申告をしても医療費控除にならないのでは?」 「30万円以上払ったら、いくら戻ってくるの?」 というご質問があります。
多焦点眼内レンズを用いた白内障手術では、 健康保険が使われる部分と、 多焦点眼内レンズを選ぶために追加で支払う 「選定療養費」があります。
白内障の治療として医療機関へ支払った選定療養費は、 医療費控除に含めて確定申告できると考えられます。ただし、 「30万円払ったら30万円が戻ってくる」 という意味ではありません。 医療費控除によって課税される所得が少なくなり、 すでに納めた所得税の一部が還付されたり、 翌年度の住民税が軽くなったりする仕組みです。
※国税庁の公開資料では、 医師による診療・治療の対価を医療費控除の対象としています。 一方、多焦点眼内レンズの選定療養費そのものを 名指しした国税庁の一般向け個別Q&Aは確認できないため、 個別の申告についての最終判断は 所轄税務署または税理士へご確認ください。
まず確認|「選定療養」と「医療費控除」は別の制度です
多焦点眼内レンズの選定療養では、 白内障手術のすべてが自費になるわけではありません。 診察・検査・白内障手術などの保険診療部分には健康保険が使われ、 対象となる多焦点眼内レンズを選ぶことで増える費用を追加で負担します。
保険診療と追加費用の違い、 単焦点・多焦点の違いについては、 有田眼科の既存記事で大きな図を使って説明しています。
医療費控除は「10万円が戻ってくる制度」ではありません
ここが最も間違えやすいところです。 医療費控除では、通常、 その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費を 合計して計算します。
- 保険金などで補てんされた金額
- 原則10万円 = 医療費控除額 ※医療費控除額は最高200万円
総所得金額等が200万円未満の方は、 10万円ではなく 「総所得金額等の5%」 を差し引きます。
例えば医療費控除額が23万円になっても、 23万円がそのまま振り込まれるわけではありません。 23万円分だけ課税される所得が少なくなり、 その結果として所得税・住民税の負担が軽くなります。
白内障手術では何を合計できる?
条件を満たす場合、 その年に支払った白内障手術の保険診療の自己負担、 多焦点眼内レンズの選定療養費、 そのほかの対象となる診療費・薬代などを合わせて計算します。 医療機関へ通院するために通常必要な 電車・バスなどの交通費も対象となる場合があります。
一方、自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車料金は、 国税庁の案内では医療費控除の対象に含まれません。
では、実際にどのくらい負担が軽くなる?
以下の金額は医療費控除の仕組みを説明するための概算例です。 実際の還付額・翌年度の住民税は、所得、扶養、社会保険料、各種控除、 すでに納めた税額などによって変わります。 「必ずこの金額が戻る」という意味ではありません。
高齢の方にもイメージしていただきやすいよう、 「今年ほかに医療費はなく、 多焦点眼内レンズの選定療養費だけを支払った」 と仮定した簡単な例で計算します。
以下は、 総所得金額等が200万円以上で、 保険金などによる補てんがなく、 医療費から10万円を差し引く場合の概算です。
| 片眼の選定療養費 | 医療費控除額の例 | 所得税率5%の場合 税負担軽減の目安 |
所得税率10%の場合 税負担軽減の目安 |
所得税率20%の場合 税負担軽減の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 30万円 | 約20万円 | 約3万円 | 約4万円 | 約6万円 |
| 33万円 | 約23万円 | 約3.5万円 | 約4.6万円 | 約6.9万円 |
| 34万円 | 約24万円 | 約3.6万円 | 約4.8万円 | 約7.2万円 |
| 36万円 | 約26万円 | 約3.9万円 | 約5.2万円 | 約7.8万円 |
| 37万円 | 約27万円 | 約4.1万円 | 約5.4万円 | 約8.1万円 |
※「税負担軽減の目安」は、 分かりやすくするため、 医療費控除額に所得税率と 福岡市の個人市県民税の所得割10%相当を加えて 単純計算した概算です。 復興特別所得税、 各種所得控除・税額控除、 課税所得の変化などは考慮していません。 実際の還付額・住民税額とは異なる場合があります。
例:片眼33万円のレンズを両眼に使用し、 同じ年に66万円支払った場合
所得税率が5%の方で、 住民税所得割も課税されている場合は、 所得税と住民税を合わせて 約8万4千円 負担が軽くなる計算例になります。
所得税率10%なら約11万2千円、 所得税率20%なら約16万8千円が 単純計算上の目安です。
さらに、 その年に支払った白内障手術の保険診療分や、 条件を満たすほかの医療費があれば、 それらも年間医療費へ加えて計算します。
例えば、 給与年収500万円 で、 給与所得控除後の総所得金額等を356万円、 医療費控除を入れる前の課税所得を250万円と 仮定します。
同じ年に多焦点眼内レンズなどの 対象医療費を66万円支払い、 保険金などによる補てんがない場合の例です。
この条件では、 所得税・復興特別所得税の軽減額が およそ5.7万円、 翌年度の住民税所得割の軽減額が およそ5.6万円となり、 合計で約11.3万円という計算例になります。
実際の税額は、 社会保険料、 扶養、 基礎控除、 生命保険料控除、 住宅ローン控除などによって変わります。 年収だけでは、 実際の還付額を決めることはできません。
最初は上の 「給与年収500万円のモデル例」 が入っています。 ご自身の金額が分かる場合は、 数字を書き換えて 「この条件で概算する」を押してください。
医療費控除の計算には「総所得金額等」、 所得税の概算には 「医療費控除を入れる前の課税所得」を使います。
軽減の概算 約56,666円
軽減の概算 約56,000円
年収・年金収入:5,000,000円、 総所得金額等:3,560,000円、 医療費控除前の課税所得:2,500,000円として 概算しています。
所得税については国税庁の所得税速算表を使って、 医療費控除前と医療費控除後の所得税額の差を概算し、 復興特別所得税2.1%相当を加えています。 住民税は福岡市の一般的な所得割 「市民税8%+県民税2%」を用いた単純な目安です。 所得税と住民税では課税所得や控除額の計算が異なるため、 実際の金額とは差が生じます。 また、 住宅ローン控除などの税額控除、 実際に納めた所得税額、 非課税制度などは反映していません。
所得税については、 すでに納めている税金があれば還付される場合があります。 住民税については、 一般に翌年度の税額が少なくなる形で反映されます。
年金生活・高齢の方に特に知っていただきたいこと
① 所得税を払っていない方
医療費を多く支払っていても、 もともと所得税が0円の場合、 所得税から戻るお金はありません。 住民税も非課税であれば、 医療費控除をしても 税負担が軽くならない場合があります。
② 所得が200万円未満の方
医療費から差し引く基準は10万円ではなく、 「総所得金額等の5%」になります。 例えば総所得金額等が150万円なら、 基準額は7万5千円です。
③ 家族の医療費も確認
自分だけでなく、 生計を一にする配偶者や親族のために 実際に支払った対象医療費も、 一定の条件で合わせて計算できます。
このページの金額はあくまで目安です。 実際の確定申告では、 国税庁の確定申告書等作成コーナーへ 所得や医療費を入力すると税額が計算されます。
片眼ずつ手術する場合は「支払った年」に注意します
医療費控除は、 原則として 1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費 をその年の医療費として計算します。
例えば右眼を12月、 左眼を翌年1月に手術して、 それぞれの年に支払いをした場合は、 2眼分を同じ年の医療費としてまとめるのではなく、 それぞれ別の年の医療費になります。
白内障の程度、 左右の見え方、 運転・仕事・生活への影響などを優先し、 医師と相談して手術時期を決めます。
生命保険や高額療養費などを受け取った場合
国税庁の医療費控除の計算では、 生命保険の入院給付金や 健康保険から支給された高額療養費など、 医療費を補てんするために受け取った金額は、 その対象となった医療費から差し引きます。
「病院へ支払った金額だけ」を見て計算するのではなく、 保険金や給付金を受け取ったかどうかも 確認しておきましょう。
有田眼科でご案内している4種類の多焦点眼内レンズ
価格掲載基準日:2026年8月12日 ※最新価格は白内障専門サイトの費用ページをご確認ください。
有田眼科では、 現在、選定療養の対象となる多焦点眼内レンズについて 個別の記事を公開しています。 このページでは税金と費用の仕組みを中心に説明し、 レンズの詳しい見え方・特徴・注意点については、 それぞれの専門記事でご確認いただけます。
以下の選定療養費は2026年8月12日時点の掲載額です。 取り扱い・費用は変更となる可能性があります。 このページでは医療費控除の具体例を理解しやすくするため金額を掲載していますが、 現在の費用は白内障専門サイトの費用ページを優先してご確認ください。

Clareon PanOptix Pro
遠方・中間・近方の3つの距離を バランスよく見やすくすることを目指した 多焦点眼内レンズです。
乱視矯正なし:340,000円
乱視矯正あり:370,000円

TECNIS Odyssey
遠方から近方まで、 幅広い範囲で連続した見え方を目指した 多焦点眼内レンズです。
乱視矯正なし:330,000円
乱視矯正あり:360,000円

TECNIS PureSee
回折リングを使わず、 遠方から中間距離を中心に、 なだらかな見え方を目指す眼内レンズです。
乱視矯正なし:330,000円
乱視矯正あり:360,000円

Vivinex Gemetric/Gemetric Plus
遠方を重視しながら、 中間・近方とのバランスを考えた 多焦点眼内レンズです。
乱視矯正なし:300,000円
乱視矯正あり:330,000円
| 多焦点眼内レンズ | 乱視なし・片眼 | 乱視用・片眼 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| Clareon PanOptix Pro | 34万円 | 37万円 | PanOptix Proの記事を見る |
| TECNIS Odyssey | 33万円 | 36万円 | TECNIS Odysseyの記事を見る |
| TECNIS PureSee | 33万円 | 36万円 | TECNIS PureSeeの記事を見る |
| Vivinex Gemetric/Gemetric Plus | 30万円 | 33万円 | Gemetricシリーズの記事を見る |
多焦点眼内レンズは、 レンズによって重視する距離や光学設計が異なります。 網膜・黄斑・視神経・角膜・乱視・ドライアイなど 目の状態によっては、 多焦点眼内レンズより単焦点眼内レンズが適する場合もあります。
確定申告のために残しておきたいもの
医療費控除を申告する場合は、 選定療養費を含む医療機関の領収書を 保管しておきましょう。 保険外部分は 医療費通知やマイナポータルの医療費情報へ すべて反映されない場合があります。
医療機関の領収書
白内障手術代、 選定療養費など、 実際に支払った金額を確認します。
保険金・給付金の資料
生命保険の給付金や高額療養費など、 補てんされた金額を確認します。
1年分の医療費
眼科だけでなく、 条件を満たすほかの診療費・薬代なども 確認します。
国税庁では、 確定申告の際に 「医療費控除の明細書」を作成します。 領収書は原則として申告書へ添付するのではなく、 内容確認のため一定期間保存する必要があります。
多焦点眼内レンズと医療費控除のよくある質問
Q.選定療養は保険外なのに、 医療費控除を申告できますか?
保険が使えるかどうかと、 所得税の医療費控除の対象になるかどうかは 別の考え方です。 国税庁は、 医師による診療・治療の対価を 医療費控除の対象としています。 多焦点眼内レンズの選定療養費については、 白内障治療として支払った費用として 医療費控除に含めて申告できると考えられますが、 個別の税務判断は 所轄税務署または税理士へご確認ください。
Q.33万円払ったら、 23万円戻ってくるのですか?
いいえ。 33万円から10万円を差し引いた23万円は、 条件を単純化した場合の 「医療費控除額」です。 23万円がそのまま現金で戻るわけではありません。 実際に軽くなる税金は、 所得税率や住民税、 ほかの控除などによって変わります。
Q.年収が分かれば、 戻る金額も分かりますか?
年収だけでは正確には分かりません。 所得税は、 給与所得や年金所得などから 社会保険料控除、 基礎控除、 扶養控除などを差し引いた 課税所得などによって計算されます。 そのため、 同じ年収でも税負担軽減額が 異なることがあります。
Q.年金だけで生活しています。 確定申告すれば必ず戻りますか?
必ず戻るわけではありません。 もともと所得税を納めていない場合は、 所得税の還付がないことがあります。 住民税も非課税の場合は、 医療費控除による税負担の軽減が 生じない場合があります。
Q.夫婦2人の医療費を一緒にできますか?
国税庁では、 本人だけでなく、 生計を一にする配偶者やその他の親族のために 納税者が支払った対象医療費について 医療費控除を受けられる仕組みがあります。 誰が実際に支払ったかなどによって 取扱いが変わるため、 申告時にご確認ください。
Q.両眼を手術するときは、 2眼分をまとめて申告できますか?
同じ年の1月1日から12月31日までに 実際に支払った医療費であれば、 その年の医療費として合計して計算します。 年をまたいで支払った場合は、 それぞれ支払った年の医療費になります。
Q.レンズは値段が高いほど良いのですか?
価格だけでは決まりません。 レンズによって 重視する距離や光学設計が異なり、 網膜、視神経、角膜、乱視など 目の状態によって適するレンズも異なります。 有田眼科では検査結果と、 運転・読書・パソコン・スマートフォンなど 日常生活で重視する距離を確認しながら相談します。
税金についての大切な注意
このページは医療費控除の仕組みを患者さんに理解していただくため、 具体的な金額例・早見表・概算シミュレーターを掲載しています。 個別の申告可否や実際の還付額は、所轄税務署・国税庁の相談窓口・税理士へご確認ください。
このページの金額やシミュレーターは、 医療費控除の仕組みを 患者さんに分かりやすく説明するための概算例です。 実際の所得税の還付額や翌年度の住民税は、 所得、 年金、 扶養、 各種所得控除、 税額控除、 保険金・給付金などによって異なります。
有田眼科では 白内障手術や眼内レンズについてご説明できますが、 個別の確定申告や税額の最終判断は行えません。 ご不明な場合は、 所轄税務署、 国税庁の相談窓口、 税理士へご確認ください。
参考資料
多焦点眼内レンズは、 費用だけでなく「見たい距離」と目の状態から選びます
福岡市中央区小笹の有田眼科では、 白内障の程度、 角膜・乱視、 網膜・黄斑・視神経などを確認し、 日常生活でよく見る距離や 眼鏡への考え方を伺いながら 眼内レンズを検討します。
多焦点眼内レンズを使うことを決めてから 受診する必要はありません。 単焦点眼内レンズを含め、 検査後に相談できます。
現在の費用を確認する 眼内レンズの違いを確認する 選定療養の仕組みを確認する 有田眼科の白内障手術を確認する有田眼科 院長 有田 量一
〒810-0033 福岡県福岡市中央区小笹2丁目2-3
電話 092-707-2132