糖尿病があっても、白内障手術を受けられる場合は多くあります。 大切なのは「糖尿病だから手術できる・できない」と単純に決めるのではなく、 白内障に加えて糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、HbA1cや全身状態まで確認して手術時期を考えることです。
糖尿病のある方では、白内障だけを見て手術を決めません。
白内障を取り除いても、網膜や黄斑に病気があると期待したほど視力が改善しないことがあります。 有田眼科では、水晶体だけでなく眼底・黄斑OCTなどを確認し、 「白内障を取ったあとにどの程度の見え方を期待できるか」まで考えて治療計画を立てます。
糖尿病があっても白内障手術はできますか?
糖尿病があることだけを理由に、白内障手術ができないわけではありません。
白内障によって、かすみ、まぶしさ、視力低下などが起こり、 運転、仕事、家事、読書など日常生活に支障が出ている場合には、 糖尿病がある方でも手術を検討します。
ただし糖尿病のある方では、水晶体が濁る白内障と同時に、 網膜の血管が障害される糖尿病網膜症や、 視力に重要な黄斑がむくむ糖尿病黄斑浮腫が起きている場合があります。
そのため、手術前には次のような点を確認します。
- 今の見えにくさは白内障が主な原因なのか
- 糖尿病網膜症はあるか、どの程度進行しているか
- 糖尿病黄斑浮腫がないか
- 白内障手術を先に行ってよい状態か
- 網膜治療を先に行った方がよい状態か
- 白内障手術後にどの程度の視力改善が期待できそうか
- HbA1cや血糖値、腎機能など全身状態に問題がないか
「糖尿病があります」だけでは、白内障手術の可否は決まりません。
眼の状態と全身状態を一人ひとり確認することが重要です。
糖尿病があると、なぜ白内障手術前の検査が重要なのでしょうか
白内障は、水晶体が濁る病気です。一方、糖尿病網膜症は目の奥にある網膜の血管に起こる病気です。
糖尿病黄斑浮腫は、網膜の中央にある黄斑へ水分が漏れ、網膜がむくんだ状態です。
| 病気 | 主に問題となる場所 | 主な見え方への影響 |
|---|---|---|
| 白内障 | 水晶体 | かすみ、まぶしさ、視力低下など |
| 糖尿病網膜症 | 網膜・網膜血管 | 進行すると出血、飛蚊症、視力低下、視野障害など |
| 糖尿病黄斑浮腫 | 黄斑 | 中心のかすみ、ゆがみ、視力低下など |
例えば、白内障による濁りが強くても網膜が良好であれば、 白内障手術によって大きな視力改善を期待できる場合があります。
反対に、白内障だけでなく黄斑浮腫や進行した糖尿病網膜症がある場合には、 水晶体を透明にしても網膜側の問題が残るため、術後視力が制限されることがあります。
「白内障がある」ことと、「今の見えにくさが白内障だけによる」ことは同じではありません。
糖尿病がある方の白内障手術前に確認する主な検査
糖尿病がある方では、一般的な白内障手術前検査に加えて、白内障以外の病気が見え方に影響していないかを確認します。実際に必要な検査は目の状態によって異なります。
- 視力・屈折検査
白内障だけでは説明しにくい視力低下がないかを確認します。 - 細隙灯顕微鏡検査
角膜、前房、虹彩、水晶体などを観察し、白内障の程度や瞳孔の状態を確認します。 - 散瞳眼底検査
必要に応じて瞳孔を広げ、網膜出血、新生血管、網膜虚血を疑う変化などがないか確認します。 - 黄斑OCT
眼底をみただけでは分かりにくい黄斑浮腫や黄斑の構造変化を確認します。 - 必要に応じた網膜の追加検査
網膜症の病変範囲や網膜血管の状態を詳しく確認する検査を追加することがあります。 - 眼軸長・角膜・乱視の測定
白内障手術で使用する眼内レンズの度数計算に必要です。
白内障の濁りが強く、手術前に眼底を十分観察できない場合があります。
その場合は、必要に応じて超音波検査などを追加し、手術前に分かる範囲と分からない範囲を整理したうえで、術後の見え方について説明します。
白内障手術前に黄斑OCTを調べる理由
糖尿病がある方の白内障手術では、黄斑OCTが非常に重要な検査の一つです。
OCTは網膜を断層画像として撮影し、 黄斑の厚み、網膜内の液体、牽引などを詳しく確認する検査です。
黄斑浮腫が目立たないOCTの参考画像
糖尿病黄斑浮腫のOCT参考画像
一見すると白内障による視力低下に思えても、 OCTを撮影すると黄斑浮腫が見つかることがあります。
また、糖尿病黄斑浮腫だけでなく、黄斑上膜、加齢黄斑変性など 白内障以外の病気が術後の見え方に影響する場合もあります。
白内障手術前のOCTは、「手術できるか」を見るだけの検査ではありません。
「白内障を取ったあと、その網膜がどの程度の見え方を出せそうか」を考えるための検査でもあります。
文献では、白内障手術後の糖尿病網膜症について何が分かっていますか?
糖尿病患者さんの白内障手術と糖尿病網膜症の関係については、多くの研究が行われています。
2025年にAmerican Journal of Ophthalmologyに掲載されたシステマティックレビュー・メタ解析では、 15研究、7,287人の糖尿病患者さんのデータが解析されました。
| 評価項目 | 研究結果 | 意味 |
|---|---|---|
| 術後の糖尿病網膜症発症 | RR 1.38 95%CI 1.16~1.63 |
対照群と比較して発症が多いという解析結果 |
| 既存の糖尿病網膜症の進行 | RR 1.46 95%CI 1.28~1.66 |
術後に網膜症が進行する割合が高いという結果 |
| 視力を脅かす網膜症への進行 | RR 1.84 95%CI 1.21~2.81 |
増殖糖尿病網膜症や臨床的に重要な黄斑浮腫などへの進行を含む |
RR 1.46という数字は、手術を受けた全員の網膜症が46%悪化するという意味ではありません。 対照群と比較した相対的なリスクです。
また、このメタ解析では、研究方法をそろえた一部の解析では 網膜症の新規発症に有意差が出なかった結果もあり、 すべての研究結果が完全に一致しているわけではありません。
この研究から重要なのは「糖尿病だから白内障手術を避ける」という結論ではありません。
術前に糖尿病網膜症の状態を確認し、 手術後も特に1年程度は網膜症の進行に注意して経過をみることが重要だということです。
黄斑浮腫のリスクはどのくらいありますか?
白内障手術後には、網膜の中央である黄斑がむくむことがあります。 糖尿病のある方では、この黄斑浮腫のリスクが高くなることが知られています。
英国の8施設で行われた大規模データベース研究では、 81,984眼の白内障手術が解析されました。
手術合併症や糖尿病などのリスク因子がない眼では、 術後黄斑浮腫の発症率は1.17%でした。
一方、糖尿病がある患者さんでは、糖尿病網膜症がまだ確認されていない場合でも、 黄斑浮腫の相対リスクは1.80倍でした。
さらに、糖尿病網膜症がすでにある場合には相対リスクが6.23倍となり、 網膜症が重症になるほどリスクが上昇する傾向が報告されました。
「糖尿病網膜症がないから術後の黄斑は絶対に大丈夫」とは言えません。
糖尿病があること自体が一つのリスク因子となるため、術前OCTと術後の黄斑評価が重要です。
糖尿病黄斑浮腫がある場合、白内障手術はどうしますか?
黄斑浮腫がある場合には、白内障手術だけを急いで行うのではなく、 黄斑浮腫の状態と白内障の程度を比較して治療順序を考えます。
糖尿病黄斑浮腫は、網膜の中心である黄斑に水分がたまり、 視力低下やゆがみを起こす病気です。
白内障手術は濁った水晶体を取り除く手術であり、 糖尿病黄斑浮腫そのものを治す手術ではありません。
黄斑浮腫が視力に大きく影響している場合には、 抗VEGF薬硝子体内注射などの網膜治療を先行または併用して、 黄斑の状態を整えながら白内障手術の時期を考えることがあります。
抗VEGF注射を白内障手術前後に行うことはありますか?
糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫の状態によっては、 抗VEGF薬硝子体内注射を白内障手術の前後に行うことがあります。
2024年に報告されたシステマティックレビュー・メタ解析では、 糖尿病網膜症がすでにある患者さんを対象とした無作為化比較試験が解析されました。
抗VEGF薬を使用した群では、糖尿病網膜症の進行について RR 0.37、95%信頼区間0.19~0.70という結果が示されました。
つまり研究集団では、抗VEGF治療を組み合わせた群で網膜症進行が少なかったことを示します。
また、術後の最良矯正視力についても統計学的な改善が報告されています。
これは「糖尿病がある人は全員、白内障手術と同時に注射をする」という意味ではありません。
網膜症の重症度、黄斑浮腫の有無、これまでの治療歴、OCT所見などから必要性を判断します。
糖尿病網膜症がある場合、手術と網膜治療はどちらを先にしますか?
一つの決まった順番がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。
網膜症が軽く、黄斑浮腫がない場合
白内障による見えにくさが強ければ、 網膜を経過観察しながら白内障手術を先に検討できる場合があります。
糖尿病黄斑浮腫がある場合
黄斑浮腫が視力低下の大きな原因になっている場合には、 抗VEGF治療などを先行し、黄斑の状態を見ながら白内障手術の時期を検討することがあります。
増殖前・増殖糖尿病網膜症がある場合
網膜虚血や新生血管の状態によっては、 網膜光凝固や抗VEGF治療などを先に行う必要があります。
硝子体出血や牽引性網膜剥離がある場合
進行した糖尿病網膜症では、硝子体手術が必要になることがあります。
白内障も進行している場合には、 網膜硝子体手術と白内障手術をどのように組み合わせるかを眼の状態によって検討します。
HbA1cが高いと白内障手術はできませんか?
現在の文献では、「HbA1cが○%を超えたら白内障手術は一律にできない」 という固定した基準だけで判断する考え方は支持されていません。
HbA1cは糖尿病の血糖コントロールを評価する非常に重要な指標です。 しかし、白内障手術の場合には、HbA1cだけでなく眼の状態、 感染症の有無、腎機能、全身状態などを総合して判断します。
HbA1cと術後合併症に明確な関連を認めなかった研究
2022年の研究では、白内障手術を受けた4,401人のうち、 糖尿病があった1,525人が解析されました。
糖尿病患者さんのうち、眼科への追加受診を必要とする術後合併症が起きた方は 114人、7.5%でした。
しかし、合併症が起きた群と起きなかった群の平均HbA1cはそれぞれ 52 mmol/molと50 mmol/molで、有意な差は認められませんでした。
多変量解析でもHbA1cは有意なリスク因子とはなりませんでした。
HbA1c 7%を超えると黄斑浮腫が増えたという研究もあります
一方、糖尿病患者1,285人を調べた別の研究では、 白内障手術後1年以内の嚢胞様黄斑浮腫について、 糖尿病網膜症とHbA1cがリスク因子となりました。
この研究では、術前HbA1cが7%を超える場合の相対リスクが2.01、 95%信頼区間1.10~3.67と報告されています。
2025年の大規模研究では、一律のHbA1c基準を支持しませんでした
2025年の多施設データを用いた研究では、 術前HbA1cを4群に分け、白内障手術後30日以内の眼内炎を検討しました。
| HbA1c | 眼内炎のハザード比 | 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| 7%未満 | 0.62 | 0.30~1.27 |
| 7~8.4% | 1.08 | 0.44~2.66 |
| 8.5~11.3% | 1.36 | 0.43~4.28 |
| 11.3%超 | 2.85 | 0.29~27.44 |
いずれの群でも統計学的に有意な差は認められず、 著者らはHbA1cだけを理由として白内障手術を延期すべきではないと結論しています。
ただし、11.3%を超える群では信頼区間が非常に広く、 極端に高いHbA1cを「安全である」と証明した研究ではありません。
HbA1cは「関係ない数字」でも、「この数字だけで手術可否を決める数字」でもありません。
糖尿病網膜症、黄斑浮腫、腎機能、現在の血糖状態、感染症、全身状態を合わせて判断します。
文献から見えてくる「HbA1cより先に黄斑を見る」という考え方
2026年に発表された糖尿病患者さんの白内障手術に関するレビューでは、 固定したHbA1cの基準だけで手術時期を決めるのではなく、 OCTを用いて黄斑を評価し、網膜の状態を含めて個別に治療を考える 「macula-first」という考え方が紹介されています。
これは、白内障手術後の視力を決めるのが水晶体だけではないためです。
- 白内障の濁りの程度
- 糖尿病網膜症の重症度
- 糖尿病黄斑浮腫の有無
- 黄斑上膜など別の黄斑疾患
- 視神経や緑内障の状態
- 角膜や眼表面の状態
これらを総合して、「手術をするか」だけでなく、 「今手術するのか」「網膜治療を先にするのか」 「術後にどの程度の視力改善が期待できるのか」を判断します。
有田眼科でも、白内障の濁りだけでなく網膜・黄斑・視神経まで確認することを重視しています。
急激に血糖を下げれば、すぐ白内障手術ができますか?
血糖コントロールを改善することは、 糖尿病網膜症だけでなく全身の合併症を防ぐうえで重要です。
ただし、長期間血糖コントロールが不良で、 すでに糖尿病網膜症がある方では、 急速な血糖改善に伴って網膜症が一時的に悪化することが知られています。
これは「血糖を下げない方がよい」という意味ではありません。
白内障手術のためだけに患者さん自身の判断でインスリンや糖尿病薬を増減せず、 内科と眼科で網膜症の状態を共有しながら糖尿病治療を続けることが大切です。
糖尿病がある方の眼内レンズ選び
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入します。
単焦点眼内レンズ、多焦点眼内レンズなどを検討する場合にも、 生活上の希望だけでなく網膜や黄斑の状態を確認することが重要です。
糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫がある場合、 あるいは今後網膜治療が必要となる可能性が高い場合には、 その眼でどの程度の視機能が期待できるかを考えて眼内レンズを選びます。
多焦点眼内レンズが糖尿病という理由だけで一律に選択できないわけではありませんが、 網膜・黄斑・視神経の状態によってはメリットを十分に得にくい場合があります。
高価な眼内レンズを選べば、糖尿病網膜症や黄斑浮腫による見えにくさまで改善するわけではありません。
その眼の状態と、手術後に望む生活の両方から選ぶことが大切です。
白内障手術後も糖尿病網膜症の診察は続きます
糖尿病のある方では、白内障手術が終われば眼科通院も終了、というわけではありません。
術後は通常の白内障手術後の診察に加えて、 必要に応じて網膜や黄斑の状態を継続的に確認します。
- 術後視力
- 眼圧
- 角膜の状態
- 眼内炎症
- 眼内レンズの状態
- 糖尿病網膜症の進行
- 黄斑浮腫の出現・再発
特に、白内障手術後に一度見えるようになったあと再びかすんできた場合や、 中心がゆがむ、視力が戻らないなどの場合には、 黄斑OCTで原因を確認することがあります。
2025年のメタ解析でも、糖尿病患者さんでは白内障手術後、 とくに術後1年間は網膜症の進行に注意して観察することが推奨されています。
糖尿病がある方が白内障手術前に持参するとよいもの
- 糖尿病手帳
- 最近のHbA1c・血糖値が分かる検査結果
- お薬手帳
- インスリンや注射薬の名称が分かるもの
- 過去に受けた網膜レーザーや眼内注射の資料
- 他院で撮影した眼底写真やOCTがある場合はその資料
- 内科主治医からの紹介状がある場合は紹介状
腎臓病、心臓病、脳血管疾患など糖尿病に関連する全身の合併症がある場合も、 診察時にお伝えください。
糖尿病薬やインスリンは、白内障手術のために自己判断で中止しないでください。
手術前後の使用方法は、服用内容や食事予定、全身状態を確認したうえで個別に判断します。
こんな症状がある場合は白内障だけと考えないでください
白内障は一般的にゆっくり進行します。
そのため、次のような急な症状がある場合には、 糖尿病網膜症、硝子体出血、網膜剥離など別の病気が起きている可能性があります。
- 急に視力が低下した
- 黒い点や影が急に増えた
- 目の前に墨を流したような影が出た
- 視野の一部が欠けた
- 物が急にゆがんで見える
- 中心が急に見えにくくなった
有田眼科が糖尿病のある方の白内障手術で大切にしていること
白内障だけでなく網膜・黄斑を見る
細隙灯顕微鏡で白内障の程度を確認すると同時に、 眼底検査、OCTなどを用いて糖尿病網膜症や黄斑浮腫を確認します。
「手術できるか」だけでなく「手術後どう見えそうか」を考える
白内障手術を行うこと自体が目的ではありません。 白内障以外の眼疾患も含めて、どの程度の視力改善が期待できそうかを考えます。
網膜治療と白内障手術の順序を考える
網膜症が安定していれば白内障手術を先に行うこともあります。 一方、黄斑浮腫、新生血管、広範囲の網膜虚血などがあれば、 網膜治療を先行・併用する場合があります。
HbA1cの数字だけで判断しない
HbA1cは重要ですが、一つの数字だけで手術の可否を決めるのではなく、 糖尿病網膜症、黄斑浮腫、血糖値、腎機能、全身状態などを確認します。
術後も網膜をフォローする
糖尿病患者さんでは、白内障手術後も糖尿病網膜症や黄斑浮腫が変化する可能性があります。 必要な間隔で眼底・OCTを確認します。
白内障、水晶体、網膜、黄斑を別々に考えるのではなく、 その眼全体としてどのような治療が合理的かを考えることが大切です。
糖尿病がある方の白内障手術|よくある質問
糖尿病があっても白内障手術はできますか?
糖尿病があるという理由だけで手術ができないわけではありません。 糖尿病網膜症、黄斑浮腫、HbA1c、全身状態などを確認して手術時期を判断します。
HbA1cが8%なら白内障手術はできませんか?
HbA1cだけで一律に手術可否を決めるものではありません。 研究でも固定したHbA1c基準だけで白内障手術を延期することは支持されていません。 ただし血糖コントロールが大きく乱れている場合や全身状態に問題がある場合には、 内科と連携して手術時期を検討します。
HbA1cが高くても全く問題ありませんか?
そうではありません。HbA1c高値と術後黄斑浮腫のリスクとの関連を示した研究もあります。 HbA1cを無視するのではなく、網膜症、黄斑浮腫、腎機能などと合わせて判断します。
糖尿病網膜症があっても白内障手術はできますか?
可能な場合があります。ただし網膜症の病期によっては、 網膜光凝固、抗VEGF注射などを先に行う場合があります。 進行した網膜症では硝子体手術を含めた治療計画を検討します。
黄斑浮腫があると白内障手術をしても見えませんか?
黄斑浮腫の程度によります。 白内障手術で水晶体の濁りを取り除くことはできますが、黄斑浮腫自体は別の病気です。 OCTで黄斑の状態を確認し、必要に応じて網膜治療と組み合わせます。
糖尿病の薬やインスリンは白内障手術の日に止めますか?
自己判断で中止・増減しないでください。使用している糖尿病薬やインスリン、手術当日の食事予定などによって対応が異なるため、有田眼科と糖尿病を診ている主治医の指示を確認します。
糖尿病があると多焦点眼内レンズは使えませんか?
糖尿病という診断だけで一律に決まるものではありません。 糖尿病網膜症や黄斑浮腫、視神経、角膜などの状態と 希望する見え方を確認して適応を判断します。
白内障手術をすれば糖尿病網膜症も治りますか?
治りません。白内障は水晶体の病気、糖尿病網膜症は網膜の病気です。 糖尿病網膜症に治療が必要な場合には、 抗VEGF注射、レーザー、硝子体手術などを病状に応じて検討します。
白内障手術後も糖尿病の眼科検査は必要ですか?
必要です。糖尿病網膜症や黄斑浮腫は白内障手術後も進行・再発する可能性があります。 網膜症の病期や黄斑の状態に応じて眼底検査やOCTを継続します。
関連する診療
このページでは、糖尿病がある方が実際に白内障手術を受ける場合の判断に絞って解説しました。 白内障そのもの、糖尿病網膜症、手術方法の詳しい説明は それぞれの親ページへ情報を集約しています。
医学論文から分かるポイント
- 糖尿病があるだけで白内障手術を避ける必要はありません。
- 糖尿病網膜症がある場合、術後の網膜症進行にはより注意が必要です。
- 糖尿病がある方は、網膜症がなくても術後黄斑浮腫のリスクが上昇するという大規模研究があります。
- HbA1cだけで手術可否を決める根拠は十分ではありません。
- 一方でHbA1c高値と術後黄斑浮腫との関連を示す研究もあり、血糖管理を軽視してよいわけではありません。
- 糖尿病網膜症・黄斑浮腫がある場合には、抗VEGF治療などを手術前後に組み合わせることが有効な患者さんもいます。
- 最終的には、水晶体だけでなく黄斑OCT・眼底・全身状態を含めた個別判断が重要です。
医学論文の数字は、対象患者さんの年齢、糖尿病罹病期間、網膜症の病期、 手術方法、使用薬剤、観察期間などによって異なります。 研究結果を一人ひとりの患者さんへそのまま当てはめることはできません。
主な参考資料・医学論文
- 日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会. 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版). 日本眼科学会雑誌 124:955-981,2020.
- Lee SS, et al. Incidence and Progression of Diabetic Retinopathy After Cataract Surgery: A Systematic Review and Meta-Analysis. Am J Ophthalmol. 2025;269:105-115. PMID: 39179126.
- Chu CJ, et al. Risk Factors and Incidence of Macular Edema after Cataract Surgery: A Database Study of 81984 Eyes. Ophthalmology. 2016. PMID: 26681390.
- Wu J, et al. Management after cataract surgery for patients with diabetic retinopathy: a systematic review and meta-analysis. Int Ophthalmol. 2024;44:166. PMID: 38557801.
- Hussain ZS, et al. Is There a Safe Glycemic Threshold for Cataract Surgery? Am J Ophthalmol. 2025;277:17-25. PMID: 40324554.
- Boroojeny AB, et al. The Association Between Glycaemic Control, Renal Function and Post-operative Ophthalmic Complications in People With Diabetes Undergoing Cataract Surgery. Diabetes Ther. 2022;13:723-732. PMID: 35278194.
- Glycemic control and macular edema in patients undergoing cataract surgery. Primary Care Diabetes. 2023. PMID: 36599797.
- Garcia-Cabrera CR, Afshari NA. Cataract surgery in patients with diabetes mellitus: preoperative, intraoperative, and postoperative considerations. Curr Opin Ophthalmol. 2026;37:42-47. PMID: 41343850.
- 有田眼科「白内障」
- 有田眼科「白内障手術」
- 有田眼科「糖尿病網膜症」
※本記事は一般的な医学情報と公開されている医学論文をもとに作成しています。 白内障手術の適応、糖尿病網膜症・黄斑浮腫の治療時期、 眼内レンズの選択は患者さんごとに異なります。 実際の治療方針は診察・検査結果をもとに判断します。
監修:有田眼科 院長 有田 量一
執筆・医学的内容の確認: 有田眼科 院長 有田 量一