両目に白内障があっても、必ず両目を同じ日に、あるいは同じ間隔で手術するわけではありません。 有田眼科では、左右それぞれに白内障手術が必要かを確認し、 両眼とも手術する場合には、 まず1眼目の手術を行い、術後の目の状態と実際の見え方を確認してから2眼目の時期を考えます。
「白内障手術は2週間あければよい」「1か月あけるのが正解」という全員共通の答えはありません。
反対眼の白内障の程度、1眼目の術後経過、左右差、 仕事・運転など生活上の必要性によって適切な間隔は異なります。
白内障手術は基本的に片目ずつ考えます
白内障は両目に起こることが多い病気ですが、 左右が同じ程度、同じ速度で進行するとは限りません。
右目は眼鏡を替えても見えにくい一方で、 左目はまだ十分見えていることもあります。
その場合には、見えにくい側だけを先に手術し、 反対眼は経過観察することがあります。
反対に両眼とも白内障が進み、 運転や仕事、家事などへ影響しているのであれば、両眼の手術を計画します。
「両目に白内障がある」ことと、 「両目を今すぐ手術する必要がある」ことは同じではありません。
有田眼科では左右それぞれについて、 白内障の程度、矯正視力、まぶしさ、網膜・黄斑・視神経、 角膜、乱視などを確認して手術適応を判断します。
両目とも手術する場合、なぜ1眼目の結果を確認するのでしょうか?
白内障手術後には、単に「よく見えるか」だけでなく、 いくつか確認したい項目があります。
- 角膜の状態
- 眼内の炎症
- 眼圧
- 眼内レンズの位置
- 網膜・黄斑の状態
- 実際の術後視力
- 予定した屈折度数に近いか
- 遠方・中間・近方の実際の見え方
これらを確認することで、1眼目が順調に経過しているかを判断できます。
また、実際の見え方を患者さん自身が経験することで、 「2眼目も同じような見え方を目指したい」 「もう少し近くを重視したい」など、 2眼目について具体的に考えやすくなることがあります。
1眼目は単なる「最初の手術」ではありません。
術後に得られた情報は、2眼目の手術計画を考えるための大切な材料になります。
1眼目と2眼目は何日あけますか?
白内障手術の間隔には、すべての患者さんに共通する決まった日数はありません。
数日・数週間という単純な数字だけではなく、 1眼目の術後経過と反対眼の状況から判断します。
| 確認すること | 2眼目の時期への影響 |
|---|---|
| 1眼目の術後経過 | 炎症、角膜、眼圧などに問題がないか確認します |
| 1眼目の屈折結果 | 予定した度数との違いを2眼目の計画へ生かせる場合があります |
| 反対眼の白内障 | 進行が強ければ早めの2眼目を考えることがあります |
| 左右の度数差 | 不同視が強ければ2眼目を早めに検討する場合があります |
| 網膜・黄斑・視神経 | 別の病気があれば追加評価や治療が必要になる場合があります |
| 仕事・運転・生活 | 早く両眼視を整える必要性が高いか確認します |
有田眼科の既存ページでも、両眼とも白内障手術が必要であっても、 2眼目をいつ行うかは1眼目の術後経過や網膜・視神経・角膜、 全身状態などを確認して決めると説明しています。
2眼目を比較的早めに考える場合
例えば次のような場合には、1眼目の経過に問題がなければ、 2眼目について比較的早めに相談することがあります。
- 両眼とも白内障が進んでいる
- 反対眼も眼鏡で十分な視力が得られない
- 片眼手術後の左右の度数差が大きい
- 左右差のため眼鏡を使いにくい
- 運転や仕事で両眼視が重要
- 反対眼のまぶしさ・かすみが強い
- 両眼の見え方を早くそろえたい
特に、強い近視の方で片目を遠方寄りに合わせた場合などには、 手術をしていない反対眼との度数差が大きくなり、 不同視による違和感が出ることがあります。
このような場合には、1眼目の経過を確認しながら2眼目の時期を考えます。
2眼目を急がず待つことがある場合
反対眼の白内障が軽く、日常生活にほとんど困っていなければ、 1眼目の手術後すぐに2眼目を行う必要はありません。
また、1眼目の術後に予定外の変化があった場合には、 その原因を確認してから2眼目へ進むことがあります。
- 角膜のむくみが強い
- 炎症が長引いている
- 眼圧変化を確認する必要がある
- 黄斑浮腫など網膜の変化がある
- 屈折がまだ安定していない
- 別の眼疾患について追加検査が必要
- 全身状態に変化がある
予定した日程どおりに2眼目を行うことより、 1眼目が安全に経過していることを確認する方が重要です。
文献では「6週間以内」と「7~12か月」が比較されています
2眼目の白内障手術をいつ行うかについては、以前から研究されています。
Lancetに報告された無作為化比較試験では、 2眼目の白内障手術を待っていた208人が、 次の2群に分けられました。
両眼で測定した一般的な視力やコントラスト感度の差は比較的小さかった一方、 早期に2眼目を手術した群では、 患者さん自身が感じる見えにくさや生活の質、立体視でより良い結果が得られました。
自己評価による生活上の見えにくさでは、 両群の差が項目によって11%から30%あり、 読書に関する項目では約30%の差が報告されています。
ただし、この研究は「2眼目は6週間以内が正解」と証明した研究ではありません。
長期間待機することと比較した研究であり、 現在の手術技術・診療体制とも異なる部分があります。
2眼目を手術する意味は「もう片方も1.0にする」だけではありません
片目の白内障手術が終わってよく見えるようになると、 「片目が見えるから、もう片方は手術しなくてもよいのでは」 と感じる方もいます。
もちろん、反対眼が十分見えていて困っていなければ、 経過観察できることがあります。
一方、両眼とも手術適応がある場合には、 2眼目の手術によって次のような改善が期待できる場合があります。
- 左右の見え方をそろえやすくなる
- 左右の屈折差を小さくできる
- 眼鏡を使いやすくなる
- 立体視・奥行き感覚が改善する可能性
- 両眼での見え方が安定する
- 片眼の白内障によるまぶしさやにじみを減らせる
したがって2眼目の手術は、 単に「2つ目の白内障を取る」という意味だけではありません。
1眼目の結果を2眼目の眼内レンズ計算へ生かせます
両眼を別の日に手術する大きな特徴の一つが、 1眼目の実際の屈折結果を2眼目の眼内レンズ度数計算へ利用できる場合があること です。
白内障手術前には、眼軸長や角膜の形などを測定し、 眼内レンズの度数を計算します。
現在の計算式は非常に進歩していますが、 術後の度数が予測値と完全に一致するとは限りません。
左右の目には共通する解剖学的特徴があるため、 1眼目で生じた予測誤差が、 2眼目にもある程度関連することがあります。
2,129人の研究では2眼目の精度が改善しました
両眼を順番に白内障手術した2,129人を対象とした研究では、 1眼目の術後屈折予測誤差の一部を2眼目の計算へ反映する方法が検討されました。
1眼目の予測誤差が±0.50~±1.50Dだった患者さんについて、 その誤差の50%を2眼目へ補正すると、 2眼目が目標屈折に入る割合は次のように改善しました。
| 目標からの誤差 | 補正しない場合 | 1眼目を参考に補正 |
|---|---|---|
| ±0.25D以内 | 30% | 42% |
| ±0.50D以内 | 56% | 75% |
| ±1.00D以内 | 92% | 96% |
平均絶対誤差も0.49Dから0.37Dへ減少しました。
「1眼目のずれをそのまま半分修正すればよい」という意味ではありません。
左右の眼軸長、角膜形状、使用する計算式、眼内レンズ、 術後経過なども確認して総合的に判断します。
別の研究でも1眼目の情報を使う効果が確認されています
2019年の研究では、オーストラリア139人のデータから補正方法を検討し、 その方法を英国の605人のデータへ適用しました。
Barrett Universal II式では、 2眼目が目標屈折の±0.50D以内に入る割合が 70.74%から72.73%へ改善しました。
SRK/T式では67.77%から72.56%へ改善しています。
改善幅は計算式によって異なりますが、 1眼目の実際の術後結果が2眼目を考える情報になることが示されています。
1眼目の結果から分かるのは度数だけではありません
1眼目手術後に確認できるのは、 眼内レンズ計算の誤差だけではありません。
- 遠くはどの程度見えるか
- パソコンなど中間距離はどう見えるか
- スマートフォンや読書はどうか
- 眼鏡を必要とする場面はどこか
- 夜間のライトはどう見えるか
- まぶしさはあるか
- 左右差をどの程度感じるか
- 選んだ眼内レンズの見え方に満足しているか
例えば、1眼目を遠方へ合わせて 「思っていたより近くも見える」と感じる方もいれば、 「もう少し手元を見やすくしたい」と感じる方もいます。
このような実際の生活での見え方を確認したうえで、 2眼目の目標を再度相談できます。
1眼目の手術後は、 2眼目について考えるための「実際の見え方」という情報が増えます。
多焦点眼内レンズでも1眼目の見え方を確認します
多焦点眼内レンズを選択する場合にも、 1眼目の術後の見え方は参考になります。
多焦点眼内レンズでは遠方・中間・近方など複数距離の見え方を目指しますが、 実際の見え方やハロー・グレアの感じ方には個人差があります。
1眼目で、
- 遠方視
- 中間視
- 近方視
- 夜間の光の見え方
- 眼鏡の必要性
などを確認してから2眼目について相談できます。
ただし、1眼目と2眼目は完全に同じ目ではありません。 角膜、乱視、黄斑、網膜、視神経などの状態が左右で異なる場合には、 それぞれの眼に適したレンズを考える必要があります。
両目を同じ日に手術する方法もあるのですか?
海外を中心に、両眼の白内障手術を同じ日に続けて行う方法についても研究されています。
一方、同日両眼手術と、別の日に片眼ずつ行う手術では、 それぞれメリットと注意点があります。
別日に手術する方法では、 1眼目の術後経過や屈折結果を確認してから 2眼目へ進めるという特徴があります。
有田眼科で実際にどのような日程で両眼手術を行うかは、 左右の目と全身の状態を確認したうえで個別にご案内します。
海外の大規模解析では同日手術と別日手術も比較されています
2023年に報告されたシステマティックレビュー・メタ解析では、 同日両眼手術と、期間をあけて両眼手術を行う方法が比較されています。
解析対象は 13研究、1,100万人を超える患者さん、約1,880万眼でした。
術後視力、屈折結果、眼内炎、角膜浮腫、黄斑浮腫などについて、 全体として明確な差を認めなかったと報告されています。
一方、非無作為化研究をまとめた解析では、 後嚢破損について同日手術群でRR 1.34という結果も示されています。
患者さんの選択基準や医療体制が大きく影響するため、 この研究結果だけで一方の方法がすべての患者さんに優れているとは言えません。
この記事で重要なのは 「同日にするか、何日あけるか」という数字だけではありません。
一人ひとりの眼の状態と、 1眼目から得られる情報をどこまで2眼目へ生かすかを考えることが重要です。
糖尿病や緑内障がある場合は間隔が変わることがあります
白内障以外の眼疾患がある方では、 1眼目の術後に確認する項目が増えることがあります。
糖尿病がある場合
糖尿病網膜症や黄斑浮腫がある場合には、 術後OCTなどで黄斑の状態を確認し、 必要に応じて網膜治療との順序を考えます。
緑内障がある場合
術後眼圧、視神経、点眼治療などを確認します。 白内障手術と緑内障治療をどのように組み合わせるかによっても 治療計画が変わります。
黄斑・網膜疾患がある場合
白内障手術後の視力が網膜の状態に影響されるため、 1眼目の術後視力やOCTなどを確認して2眼目を考えることがあります。
同じ月に両目を手術できますか?
両眼とも手術適応があり、 1眼目の術後経過や全身状態に問題がなければ、 同じ月を含めて2眼目の日程を相談できる場合があります。
一方で、「同じ月にしたい」という希望だけで2眼目を急ぐものではありません。
角膜、網膜、視神経、眼圧、全身状態などを確認し、 医学的に問題がないことを優先します。
費用や高額療養費制度との関係については、別の記事で詳しく説明しています。
1眼目と2眼目、どちらを先に手術しますか?
一般には、白内障による見えにくさが強い側や、 日常生活への影響が大きい側から手術を検討します。
ただし、視力の数字だけで順番を決めるわけではありません。
- 白内障の硬さ・程度
- まぶしさ
- 左右の度数差
- 網膜・黄斑
- 視神経
- 角膜・乱視
- 利き目
- 生活上どちらの目に困っているか
などを確認して決めます。
有田眼科が両眼の白内障手術で大切にしていること
左右それぞれに本当に手術が必要か確認する
「両眼に白内障がある」という理由だけで両眼手術を前提にしません。 左右それぞれについて現在の見えにくさへの影響を確認します。
1眼目の術後経過を確認する
視力だけでなく角膜、眼圧、炎症、眼内レンズ、 網膜・黄斑などを確認します。
1眼目の実際の見え方を聞く
診察室の視力だけでなく、運転、パソコン、 スマートフォン、読書など実際の生活でどう見えているかを確認します。
1眼目の屈折結果を2眼目へ生かす
必要に応じて、1眼目の術後屈折と術前予測との差も確認し、 2眼目の眼内レンズ度数を検討する材料にします。
最終的な両眼での見え方を考える
右目と左目を別々に手術することが目的ではありません。 最終的に両眼でどのような生活を送りたいかを考えて治療計画を立てます。
1眼目と2眼目の間隔は、カレンダーだけでは決まりません。
1眼目の経過と、反対眼の状態、 そして患者さんが必要とする見え方を合わせて決めます。
白内障手術の間隔についてよくある質問
白内障手術は両目を一度に行いますか?
両眼に白内障があっても、左右それぞれについて手術が必要かを判断します。 有田眼科では1眼目の術後経過などを確認し、 2眼目の時期を個別に相談します。
両目の白内障手術は何日あければよいですか?
全員共通の日数はありません。 1眼目の角膜・眼圧・炎症・網膜などの術後経過、 反対眼の白内障、左右差、生活への影響から判断します。
2眼目は1週間後でもできますか?
日数だけでは判断できません。 その時点で1眼目が安定しているか、 反対眼に手術適応があるかなどを確認して決めます。
1眼目がよく見えれば2眼目は手術しなくてもよいですか?
反対眼の白内障が軽く、日常生活に不自由がなければ 経過観察できることがあります。 反対眼にも手術適応がある場合は、 左右差や両眼視なども含めて検討します。
1眼目の度数が少し予想と違ったら2眼目で修正できますか?
1眼目の術後屈折結果は、 2眼目の眼内レンズ度数計算を考える材料になります。 研究でも1眼目の予測誤差の一部を反映することで 2眼目の精度が改善することが示されています。 ただし単純に同じ量を修正するわけではありません。
同じ月に両目を手術できますか?
両眼に手術適応があり、 1眼目の経過や目・全身の状態に問題がなければ、 同じ月を含めて手術日程を相談できる場合があります。
費用のために2眼目を早く手術した方がよいですか?
費用だけを理由に手術時期を決めるものではありません。 まず左右それぞれについて医学的に手術が必要かを確認し、 1眼目の術後経過と反対眼の状態を優先します。
「何週間あけるか」より重要なこと
両眼の白内障手術について文献を見ると、 2眼目を早く行うことで立体視や患者さん自身が感じる見え方・ 生活の質が改善する患者さんがいることが示されています。
一方、現在では同日両眼手術についても研究されており、 適切に患者さんを選択した場合には、 別日手術と大きな差がないとする解析もあります。
つまり、医学的に重要なのは 「必ず○週間」という単純な手術間隔ではありません。
別日に手術する大きな利点の一つは、 1眼目から得られた次の情報を2眼目へ利用できることです。
- 術後の安全性を確認できる
- 実際の屈折結果を確認できる
- 眼内レンズの見え方を本人が体験できる
- 左右差による不便を確認できる
- 必要に応じて2眼目の目標を再検討できる
2,129人を対象とした研究で 1眼目の屈折予測誤差を利用して2眼目の精度が改善したことは、 この考え方を数値として示した一例です。
両眼白内障手術は 「1眼目と2眼目を何日あけるか」というスケジュールだけの問題ではありません。
1眼目から何を学び、 その情報を2眼目の安全性と見え方へどう生かすかまで考えることが重要です。
関連するページ
このページでは、両眼の白内障手術を行う場合の 1眼目と2眼目の間隔に絞って解説しました。 白内障そのものや一般的な手術時期、費用については既存ページをご覧ください。
主な参考資料・医学論文
- Laidlaw DA, et al. Randomised trial of effectiveness of second eye cataract surgery. Lancet. 1998;352:925-929. PMID: 9752814.
- Aristodemou P, et al. First eye prediction error improves second eye refractive outcome results in 2129 patients after bilateral sequential cataract surgery. Ophthalmology. 2011;118:1701-1709. PMID: 21762991.
- Turnbull AMJ, Barrett GD. Using the first-eye prediction error in cataract surgery to refine the refractive outcome of the second eye. J Cataract Refract Surg. 2019;45:1239-1245. PMID: 31326224.
- Immediate sequential vs delayed sequential bilateral cataract surgery: systematic review and meta-analysis. PMID: 37276258.
- 有田眼科「白内障」
- 有田眼科「白内障手術」
- 有田眼科「白内障手術のタイミング」
- 有田眼科「白内障手術の費用は保険でいくら?」
※白内障手術の間隔について一律の正解はありません。 研究で使用された手術間隔、患者背景、手術方法、 眼内レンズ、医療体制などは現在の個別診療とは異なる場合があります。
※両眼の手術適応、手術順序、2眼目の時期、 眼内レンズの種類・度数は、 左右それぞれの診察・検査結果と患者さんの生活上の希望をもとに判断します。
監修:有田眼科 院長 有田 量一
執筆・医学的内容の確認: 有田眼科 院長 有田 量一