2026.09.11
疾患について
緑内障の視野検査|結果の見方・MD・VFI・前視野緑内障を詳しく解説
「今の数字」より変化を追うことが重要です
緑内障の視野検査では、見える範囲のどこに感度低下があるか、 その変化が時間とともに進んでいるかを確認します。 視野が正常でもOCTや視神経に異常がみられる「前視野緑内障」の段階もあり、 眼圧・視神経・OCT・視野を組み合わせて評価することが大切です。
このページで分かること
- 視野検査で何を調べているのか
- MD・VFIという数字をどう考えるのか
- OCTが異常でも視野が正常なことがある理由
- 静的視野検査と動的視野検査の違い
- 1回の結果ではなく進行速度を見る理由
緑内障でなぜ視野検査をするのか
緑内障は、目から脳へ情報を送る視神経が障害され、 見える範囲や感度に影響が出る病気です。 眼圧を測るだけでは、患者さんが実際にどの程度「見える機能」を保てているかは分かりません。
現在の視野障害を確認
どの場所の感度が低下しているか、緑内障に特徴的な分布になっているかを確認します。
過去との変化を比較
同じ条件で検査を繰り返し、視野障害が安定しているのか、進行しているのかを評価します。
治療方針を考える
視野の残り方や進行速度は、どの程度まで眼圧を下げる必要があるかを考える材料になります。
視野検査では何がわかるのか|静的視野検査と動的視野検査
視野検査には複数の方法があります。 緑内障でよく用いられる静的自動視野検査と、 見える範囲の境界を調べる動的視野検査には、それぞれ異なる役割があります。
静的視野検査|決められた場所の感度を数値化
ハンフリー視野計などでは、一定の場所に明るさの異なる光を提示し、 その場所でどの程度弱い光まで見えるかを測ります。
数値化して過去と比較しやすいため、 緑内障の診断や進行評価で重要な検査です。
動的視野検査|見える範囲の境界を調べる
ゴールドマン視野計などでは、光を動かしながら、 見え始めた位置をつないで「等視線」を描きます。
周辺視野まで含めた広い範囲や、 高度な視野障害で残っている視野を確認したい場合などに役立ちます。
OCTと視野検査の違い|「構造」と「機能」を分けて考える
OCTと視野検査は同じ緑内障を調べる検査ですが、 観察しているものが違います。
OCT=神経の「構造」
網膜神経線維層や黄斑部の神経節細胞系などを画像化し、 神経組織の厚みや分布を評価します。
視野検査=実際の「機能」
光を認識できるかを調べ、 見える範囲のどこに感度低下があるかを確認します。
視野検査が正常でも緑内障のことがあります|前視野緑内障とは
まず知っていただきたいこと
必ずしも緑内障がないとは限りません。
一般的な視野検査ではまだ明らかな緑内障性視野障害が確認されていない一方、 視神経乳頭やOCTなどに緑内障を疑う構造的変化がみられる状態を、 前視野緑内障(preperimetric glaucoma:PPG)と呼ぶことがあります。
OCTで異常があるのに視野検査が正常なのはなぜ?
緑内障では視神経や網膜の神経組織に変化が起きても、 その時点では一般的な視野検査で明らかな異常として捉えられない場合があります。 したがって、「OCTで構造変化あり・視野検査では明らかな異常なし」 という結果は起こり得ます。
※理解しやすくするための模式図です。すべての方がこの順番で変化するわけではありません。
重要|OCTだけで前視野緑内障と決めません
OCTには、近視、視神経乳頭の形、撮影状態や解析の影響などによって、 緑内障以外の理由で異常表示が出る場合があります。
そのため、視神経乳頭、眼底所見、眼圧、近視の程度、 OCT画像そのもの、視野検査、過去からの変化を総合して判断します。
前視野緑内障を長期間追跡した2026年の研究
前視野開放隅角緑内障124眼を平均約12年間追跡した研究では、 44眼(35.5%)が研究上の開放隅角緑内障への移行と判定されました。
一方、すべての患者さんが短期間で視野障害を起こしたわけではありません。 視神経乳頭出血がみられる症例などでは、その後の進行との関連が報告されています。
MDとは|視野全体の低下を表す代表的な指標
MD(Mean Deviation)は、 年齢を考慮した正常値と比べて、 視野全体の感度がどの程度低下しているかを表す代表的な指標です。
一般にマイナスが大きいほど視野全体の低下が強い
ただし、MDだけで緑内障の重症度や治療方針を決めることはできません。 障害の位置や検査の信頼性、過去からの変化を確認します。
VFIとは|視野機能を0〜100%で表す指標
VFI(Visual Field Index)は、 視野機能をパーセントで表す指標です。 100%に近いほど正常視野に近く、視野障害が大きくなるにつれて低下します。
分かりやすい数値
視野全体の状態をパーセントで把握できます。
中心視野を重視
日常生活に重要な中心側を重く評価するよう設計されています。
経時変化にも利用
複数回の結果を並べて、時間とともにどのように変化しているか評価します。
MD・VFIだけでは判断できない理由
どこが障害されたか
同じMDでも、中心付近と周辺部では日常生活への影響が異なります。
検査にはばらつきがある
集中力、疲労、反応のタイミング、検査への慣れなどで結果が変動します。
他の眼疾患の影響
白内障、網膜疾患、他の視神経疾患などでも視野結果が変化することがあります。
初期・中期・後期で視野はどう変わるのか
緑内障の視野障害は一部分の感度低下から始まり、 進行すると欠損が広がることがあります。 ただし、障害の出方や進行速度には個人差があります。
傍中心暗点、鼻側階段、弓状暗点などがみられることがあります。
複数の視野障害が広がり、つながってくることがあります。
残っている視野が狭くなり、中心部にも影響すると日常生活への支障が大きくなります。
自覚症状より先に視野障害が進んでいることがあります
1回の検査結果だけで判断しない理由
視野検査は、患者さんが光を認識したときにボタンを押して測定する検査です。 集中力、疲れ、反応のタイミングなどの影響を受けるため、 毎回まったく同じ結果になるわけではありません。
初回は慣れていない
2回目以降の方が検査方法に慣れ、結果が安定することがあります。
疲れや集中力の影響
検査中の疲労や集中力によって反応が変化することがあります。
再現性を確認する
同じ場所の異常が繰り返し確認されるかを見て、本当の変化か判断します。
視野検査で重要なのは「変化の速度」です
緑内障では、現在の視野障害だけでなく、 どの程度の速さで変化しているかを見ることが重要です。
基準となる結果
同条件で繰り返す
MD・VFIなどを比較
イベント解析
基準となる視野と比べ、同じ場所に再現性のある悪化が起きたかを評価します。
トレンド解析
複数回のMDやVFIなどを時間軸に並べ、変化の速度を評価します。
OCTと視野検査を組み合わせて評価する理由
緑内障では、神経の構造と視野の機能が必ず同じタイミングで変化するとは限りません。 そのため、OCTだけ、視野検査だけではなく両方を比較することが重要です。
構造+機能+時間
OCT:神経の構造的変化
視野検査:実際の視機能
経時変化:進行の有無と速度
眼圧が正常でも緑内障になることがあります
緑内障は眼圧が高い人だけの病気ではありません。 眼圧が一般的な正常範囲にあっても視神経が障害される 正常眼圧緑内障があります。
眼圧
現在の値とこれまでの推移を確認します。
OCT・視神経
神経に緑内障を疑う構造変化がないか確認します。
視野
実際の視機能が保たれているか、進行していないか確認します。
視野検査はどのくらいの頻度で受けるのか
すべての患者さんに同じ間隔で行う検査ではありません。 診断直後なのか、長期間安定しているのか、 進行が疑われるのかによって検査頻度を調整します。
診断初期
進行速度を把握するため、比較的短い期間に複数回行うことがあります。
安定している場合
十分なデータが蓄積されていれば、病状に合わせて検査間隔を調整します。
進行が疑われる場合
視野変化や眼圧などに応じ、検査頻度を増やすことがあります。
緑内障の視野検査についてよくある質問
視野検査が正常なら緑内障ではないのですか?
いいえ。視野検査で明らかな異常が出る前に、 OCTや視神経に構造変化が確認される前視野緑内障があります。
OCTで異常、視野は正常と言われました。どちらが正しいですか?
両方とも正しい結果である可能性があります。 OCTは神経の構造、視野検査は見える機能を評価しているためです。 OCTだけで判断せず、視神経所見や眼圧、近視、経時変化などを総合して評価します。
MDが悪くなったら緑内障が進行したということですか?
1回のMD低下だけで進行とは判断できません。 複数回の結果を比較し、再現性のある変化か確認します。
VFIが100%なら緑内障ではありませんか?
VFIが100%に近くても、 OCTや視神経に異常がないことを保証するものではありません。
視野検査が苦手で毎回結果がばらつきます。
視野検査は慣れや疲労の影響を受けます。 検査結果の信頼性も含めて医師が評価します。
静的視野検査と動的視野検査はどちらが大切ですか?
緑内障の診断や経過観察では静的自動視野検査が中心ですが、 周辺視野や高度な視野障害の把握などでは動的視野検査が役立つ場合があります。 目的に合わせて使い分けます。
眼圧が正常なら視野検査を受けなくてもよいですか?
正常眼圧緑内障があるため、眼圧だけで判断することはできません。 視神経・OCT・視野を組み合わせて評価します。
有田眼科の緑内障検査・治療について
福岡市中央区小笹の有田眼科では、 眼圧だけでなく、視神経、眼底、OCT、視野、隅角などを必要に応じて組み合わせ、 緑内障の有無や進行度、進行速度を評価します。
視野検査の結果の意味が分からない方、 OCTでは異常と言われたのに視野検査は正常だった方、 現在の緑内障が進行しているか気になる方もご相談ください。
主な参考資料
緑内障の診断、視野検査、画像検査、治療に関する国内ガイドライン。
PubMedで確認する前視野緑内障や緑内障疑いの診断基準について検討する研究。
日本緑内障学会で確認するPreperimetric glaucoma: conversion to primary open-angle glaucoma in a 10-year follow-up.
PubMedで確認する標準自動視野検査、進行評価、緑内障診療についてのガイドライン。
PubMedで確認するA visual field index for calculation of glaucoma rate of progression.
PubMedで確認するPractical recommendations for measuring rates of visual field change in glaucoma.
PubMedで確認する※研究結果は対象患者、病型、検査方法などによって異なります。 掲載した数値は個々の患者さんの将来の進行を予測するものではありません。
視野検査は「1回の数字」ではなく、これまでとこれからを見る検査です
OCTで異常を指摘された、視野検査のMD・VFIが気になる、 緑内障治療中で進行していないか確認したい方は、 福岡市中央区小笹の有田眼科へご相談ください。
有田眼科 院長 有田 量一
〒810-0033 福岡県福岡市中央区小笹2丁目2-3
TEL 092-707-2132
視野検査を緑内障診療につなげる
視野はOCTによる構造評価と組み合わせ、過去からの変化を確認することが重要です。
執筆・医学的内容の確認:有田眼科 院長 有田 量一