緑内障の点眼薬には、房水の産生を抑える薬や、 房水の排出を促す薬など複数の種類があります。 どの薬が適するかは、現在の眼圧、目標眼圧、緑内障の種類、 治療効果、副作用、全身状態などを確認して判断します。
緑内障点眼薬の目的は眼圧を下げ、 今後の視神経障害や視野障害の進行をできるだけ抑えることです。 「一番強い薬」を選ぶのではなく、 その患者さんに必要な目標眼圧へ近づけられるか、 副作用なく継続できるかを確認しながら治療します。
緑内障の点眼薬は「房水を作る」「房水を流す」に働きかけます
眼の中では「房水」という透明な液体が作られ、 線維柱帯などの流出路を通って排出されます。 房水の産生と排出のバランスによって眼圧が保たれています。
そのため、1種類で目標眼圧へ届かないときに 異なる作用機序を持つ薬を追加することがあります。 一方、多剤併用が必ず最適とは限らず、 副作用や点眼回数、SLTなど他の治療も合わせて考えます。
緑内障の目薬・点眼薬の主な種類
緑内障点眼薬は薬剤群によって作用機序と注意点が異なります。 以下は代表的な薬剤群を患者さん向けに整理したものです。 実際の適応や禁忌は個々の製剤の添付文書と患者さんの状態を確認して判断します。
作用
主にぶどう膜強膜流出路などからの房水流出を促し、 眼圧を下げます。
特徴
緑内障治療で広く使用される薬剤群です。 1日1回の製剤が多くあります。
作用
EP2受容体へ作用し、房水流出を促進して眼圧を下げます。
特徴
非プロスタグランジン骨格の選択的EP2受容体作動薬です。
作用
毛様体に作用して房水の産生を抑え、 眼圧を下げます。
特徴
長く使用されている薬剤群ですが、 点眼薬でも全身へ吸収される可能性があります。
作用
毛様体の炭酸脱水酵素を阻害し、 房水産生を抑えて眼圧を下げます。
特徴
単剤のほか、 β遮断薬やα2刺激薬などとの配合剤にも使用されています。
作用
房水産生を抑える作用と、 ぶどう膜強膜流出路を介した房水流出を促す作用によって 眼圧下降を目指します。
特徴
他剤で目標眼圧へ届かない場合などに使用されます。 配合剤の成分としても使用されています。
作用
房水の主流出路である線維柱帯などへ働きかけ、 房水を流れやすくすることで眼圧を下げます。
特徴
リパスジルとネタルスジルでは作用や用法が同一ではありません。 ネタルスジルにはROCK阻害に加えて NET阻害が眼圧下降へ関与すると考えられています。
緑内障の目薬の副作用|「目の症状」だけでなく全身状態も確認します
点眼薬は内服薬より局所に使用する薬ですが、 全身へ吸収されることがあります。 また、長期間使用して初めて気づく副作用もあります。
| 気になる症状 | 関連することがある薬剤群 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 白目の充血 | ROCK阻害薬、プロスタノイド関連薬など | 一過性か、持続するか、痛みや視力低下を伴わないか |
| まぶたの赤み・腫れ・かゆみ | α2刺激薬、ROCK阻害薬、配合剤など | 眼瞼炎・アレルギー性眼瞼炎・接触皮膚炎などの可能性 |
| まつ毛・虹彩・目元の変化 | プロスタノイド関連薬など | 色調や眼瞼周囲の変化、左右差 |
| 息苦しさ・脈が遅い | β遮断薬など | 喘息、呼吸器疾患、心疾患、他の内服薬 |
| 眠気・口の乾き | α2刺激薬など | 日常生活への影響、他の薬剤との組み合わせ |
| かすみ・角膜の異常 | 複数の点眼薬で起こり得ます | 角膜上皮障害などがないか眼科で確認 |
中止すると眼圧が上昇する場合があります。 強い充血、眼瞼の腫れ、かぶれ、息苦しさ、 徐脈、急な見えにくさなどがある場合は、 使用している薬剤名を確認して眼科へご相談ください。
アイラミド・グラナテックと眼瞼炎|まぶたの赤み・腫れ・かゆみに注意
緑内障治療では数か月から数年にわたり点眼を続けることがあります。 治療開始直後は問題がなくても、 長期使用中に眼瞼炎やアレルギー性結膜炎が現れる薬剤があります。
アイラミド配合懸濁性点眼液
アイラミドは、 ブリモニジン酒石酸塩+ブリンゾラミド の配合剤です。 房水産生抑制など作用の異なる2成分を1本にまとめています。
現在の添付文書には眼瞼炎が副作用として記載され、 アレルギー性眼瞼炎も記載されています。 また、ブリモニジン酒石酸塩の長期投与では、 アレルギー性結膜炎・眼瞼炎の発現頻度が 高くなる傾向があることについて注意喚起されています。
長期間使用した後に、 まぶたの赤み、腫れ、かゆみ、 結膜の充血などが現れる場合もあります。 点眼開始時期と症状の経過、左右差、 他に使用している点眼薬も含めて確認します。
グラナテック®点眼液0.4%
グラナテックは リパスジル塩酸塩水和物 を有効成分とするROCK阻害薬です。 線維柱帯流出路へ働きかけて眼圧下降を目指します。
添付文書には結膜充血に加えて、 結膜炎(アレルギー性結膜炎を含む)、 眼瞼炎(アレルギー性眼瞼炎を含む)が記載されています。 また、長期投与ではアレルギー性結膜炎・眼瞼炎の 発現頻度が高くなる傾向について注意喚起されています。
製造販売後の長期使用調査では、 アレルギー・炎症関連の眼障害が16.63%、 そのうち眼瞼炎7.82%、 アレルギー性結膜炎4.33%と報告されました。
再審査資料では、 眼瞼炎の病歴やアレルギー歴がある方で アレルギー・炎症関連の眼障害が生じやすい傾向も示されています。
どちらにも眼瞼炎・アレルギー性眼瞼炎は報告されていますが、 含まれる成分も作用機序も異なります。 複数の点眼薬を使用している場合は、 どの薬が関係しているのか、 防腐剤や眼表面疾患など他の要因も含めて判断します。
配合点眼薬とは|2種類の成分を1本にまとめた点眼薬
緑内障では2種類以上の作用機序を組み合わせて 眼圧を下げることがあります。 その際、2成分を1本にまとめた配合点眼薬が使用される場合があります。
点眼する本数を減らせる場合があります
2種類の成分を別々に点眼する代わりに 1本の配合剤へまとめられる場合があります。 毎日の治療を続けやすくすることも重要です。
2成分それぞれの注意点があります
配合剤になったから副作用がなくなるわけではありません。 β遮断薬を含む場合は呼吸器・循環器、 ブリモニジンを含む場合はアレルギー症状など、 各成分の特徴を確認します。
配合剤から治療を始めるとは限りません
薬剤ごとに効能・効果や使用条件があります。 例えばアイラミドの添付文書では 単剤による治療を優先するよう記載されています。
どの成分を組み合わせるか、 これまで何が効いたか、 どの副作用があったか、 目標眼圧へどの程度追加下降が必要なのかを考えて選びます。
点眼薬を1剤から2剤へ増やすのはどんな時?
点眼薬を追加する代表的な理由は、 現在の治療だけでは目標眼圧へ十分届かない場合や、 OCT・視野で緑内障の進行が確認される場合です。
正しく点眼できているかを確認したうえで、 薬剤の追加・変更を検討します。
OCTや視野の進行が確認される場合には、 目標眼圧そのものをさらに下げる必要がないか再検討します。
薬剤によっては点眼回数を増やしても 期待した効果が得られないことがあります。 異なる作用機序の薬を追加する場合があります。
多剤併用になるほど点眼スケジュールが複雑になり、 眼表面への負担や副作用も増える場合があります。 追加するたびに、目標眼圧、進行速度、継続しやすさを再評価します。
緑内障の目薬を使っているのに眼圧が十分下がらない場合
「目薬が効かない」と感じる場合でも、 すぐに薬そのものが無効と判断するわけではありません。 まずいくつかの点を確認します。
点眼方法を確認
1滴が眼に入っているか、 点眼回数や時間を守れているか、 複数薬の使用方法が適切かを確認します。
眼圧の変動を確認
眼圧は時間帯などによって変動するため、 1回の測定値だけでは治療効果を判断できないことがあります。
OCT・視野を確認
治療の本当の目的は、 眼圧の数字だけを下げることではありません。 視神経と視野が安定しているかを確認します。
現在の眼圧ではその方の視神経を十分守れていない可能性があります。 その場合は目標眼圧を再検討し、 点眼追加、SLT、手術などを検討します。
点眼薬を増やすかSLTにするか|どちらか一方が常に正解ではありません
SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)は、 房水の出口である線維柱帯へレーザーを照射して 眼圧下降を目指す治療です。
点眼追加を検討しやすい場合
現在の点眼を問題なく継続でき、 もう少し眼圧下降を得たい場合などには、 異なる作用機序の点眼追加を検討します。
SLTを検討する場合
開放隅角でSLTの適応があり、 点眼薬を増やしたくない場合、 点眼の刺激やかぶれが問題になる場合、 点眼継続が難しい場合などにはSLTが選択肢になります。
SLTの眼圧下降効果には個人差があります。 治療後も眼圧、OCT、視野を確認し、 必要に応じて点眼治療を継続します。
点眼薬で目標眼圧へ届かない場合|手術を含めて治療を再検討します
点眼薬を複数使用しても必要な眼圧下降が得られない場合や、 OCT・視野の進行速度からさらに低い眼圧が必要と判断される場合には、 レーザーや手術を検討します。
現在の点眼を整理
作用が重複していないか、 本当に使用できているか、 副作用が治療継続を妨げていないかを確認します。
必要な眼圧下降幅を確認
目標眼圧との差が小さいのか、 さらに大きな眼圧下降が必要なのかによって 次の治療選択が変わります。
レーザー・手術を検討
緑内障の病型、隅角、 OCT・視野、白内障の有無などから SLTや緑内障手術を検討します。
個々の緑内障点眼薬を詳しく知る|ロープレッサ®点眼液0.02%
このページは緑内障点眼薬全体を理解するための「総合ページ」です。 個々の点眼薬については、 作用機序・臨床試験・副作用を専門ページで詳しく解説します。
ロープレッサ®点眼液0.02%
ネタルスジルメシル酸塩を有効成分とする 緑内障・高眼圧症治療薬です。 ROCK阻害による線維柱帯流出促進と、 NET阻害による作用が眼圧下降へ関与すると考えられています。
2026年8月17日に国内発売され、 承認された用法は1回1滴・1日1回です。 「新しい薬だから優れている」という位置づけではなく、 現在の眼圧、目標眼圧、これまでの治療、 OCT・視野、副作用などから使用を検討します。

ロープレッサだけを緑内障点眼治療の入口にせず、 今回の総合ページから各薬剤・SLT・手術へ進む構造にします。
緑内障点眼薬を正しく使うために
1回の点眼は通常1滴
多く入れれば眼圧がより下がるわけではありません。 各薬剤の処方指示に従って使用してください。
複数の目薬は間隔を確認
複数薬を続けて使用すると、 前の薬が洗い流される場合があります。 必要な間隔は製剤によって異なるため、 処方時の指示に従ってください。
製剤ごとの使い方を守る
懸濁性点眼液では使用前に振る必要がある薬もあります。 コンタクトレンズの扱いも製剤によって異なります。
特に全身への影響を考慮する薬では、 正しい点眼方法も重要です。 実際の方法は処方された薬剤の説明に従ってください。
有田眼科での緑内障点眼治療|薬の数だけでなく進行を確認します
福岡市中央区小笹の有田眼科では、 「何種類の目薬を使っているか」だけではなく、 その治療で視神経・視野を守れているかを確認します。
眼圧・目標眼圧
現在の眼圧と治療前からの変化、 その患者さんに必要な目標眼圧を確認します。
OCT・視野の経時変化
点眼によって眼圧が下がっていても、 OCTや視野が進行していないか確認します。
副作用
充血、眼瞼炎、かぶれ、 角膜・結膜の状態、 全身への影響などを確認します。
次の治療
点眼変更・追加だけでなく、 SLTや緑内障手術を含めて治療方針を考えます。
緑内障治療をさらに詳しく見る
緑内障の目薬・点眼薬についてよくある質問
緑内障の目薬には何種類ありますか?
プロスタノイド関連薬、β遮断薬、 炭酸脱水酵素阻害薬、α2刺激薬、 ROCK阻害薬、EP2受容体作動薬、 さらに複数成分を組み合わせた配合剤などがあります。 薬剤群によって眼圧を下げる仕組みと副作用が異なります。
緑内障の目薬は何種類まで使えますか?
単純に「何種類まで」と決めるものではありません。 複数の点眼薬を使用することはありますが、 薬が増えるほど点眼の負担や副作用も問題になり得ます。 必要な眼圧下降幅によってはSLTや手術も検討します。
点眼しているのに眼圧が下がらないのはなぜですか?
薬剤への反応には個人差があります。 また、点眼方法、点眼忘れ、眼圧の日内変動なども確認します。 眼圧だけでなくOCT・視野の経過も見て治療効果を判断します。
眼圧が下がっているのに緑内障が進むことはありますか?
あります。 現在の眼圧ではその方の視神経を十分守れていない場合があるため、 OCT・視野の進行が確認されれば 目標眼圧を再検討することがあります。
目薬を増やすのとSLTではどちらがよいですか?
一律にどちらがよいとは決まりません。 緑内障の種類、隅角、必要な眼圧下降幅、 現在の点眼薬、副作用、治療を継続できるかなどから判断します。
アイラミドでまぶたが赤くなることはありますか?
あります。 添付文書には眼瞼炎やアレルギー性眼瞼炎が記載されています。 ブリモニジンの長期投与では アレルギー性結膜炎・眼瞼炎が増える傾向にも注意が必要です。 症状がある場合は自己判断で中止せずご相談ください。
グラナテックで眼瞼炎になることがありますか?
あります。 グラナテックの添付文書には 眼瞼炎(アレルギー性眼瞼炎を含む)が記載されています。 長期使用中の眼瞼炎やアレルギー性結膜炎にも注意します。
副作用が出たら緑内障の目薬をやめてもよいですか?
自己判断で中止すると眼圧が上昇する可能性があります。 強い症状や息苦しさなどがある場合を含め、 使用している薬剤名を確認して速やかに医療機関へご相談ください。
ロープレッサは他の緑内障点眼薬よりよい薬ですか?
一律に優れているという意味ではありません。 ロープレッサには従来薬と異なる作用機序がありますが、 現在の眼圧、目標眼圧、緑内障の状態、 副作用、これまでの治療内容から適否を判断します。
主な参考資料
※薬剤名は代表例です。使用できる製剤、効能・効果、禁忌、 用法・用量、副作用は製品ごとに異なる場合があります。 実際の治療は最新の添付文書と患者さんの状態を確認して判断します。
緑内障の点眼薬が増えてきた方、副作用が気になる方へ
「何種類も目薬を使っている」 「眼圧が十分に下がらない」 「まぶたが赤い、腫れる、かゆい」 「点眼を増やすかSLTにするか相談したい」 といった場合もご相談ください。
有田眼科では、 現在使用している点眼薬だけでなく、 眼圧、目標眼圧、OCT、視野の進行速度、 眼表面や眼瞼の状態、全身状態を確認しながら 治療方法を考えます。
有田眼科
院長 有田 量一
〒810-0033
福岡県福岡市中央区小笹2丁目2-3
電話 092-707-2132