緑内障手術は「眼圧が高くなったらすぐ受ける」 「視野が末期になってから受ける」と一律に決まっている治療ではありません。
判断の中心になるのは、 現在の治療で、将来の視野を守るために必要な眼圧を維持できているか です。
有田眼科では、眼圧だけでなく、 目標眼圧、OCT、視野検査、進行速度、視神経、隅角、 点眼治療、白内障、過去の治療歴などを確認し、 点眼を続けるのか、SLTを検討するのか、 手術へ治療を強化するのかを考えます。
30秒でわかる|緑内障手術を考えるタイミング
- 点眼を使用しても、その目に必要な目標眼圧へ届かない場合。
- 眼圧が下がっていても、OCTや視野の進行が確認される場合。
- 進行速度が速く、将来の視機能への影響が大きいと考えられる場合。
- 副作用・点眼本数・点眼忘れなどで長期治療を続けにくい場合。
- すでに視野障害が進行しており、より低い目標眼圧が必要な場合。
- 一方、目標眼圧を維持でき、OCT・視野が安定していれば手術を急がない場合もあります。
緑内障手術はいつ必要になるのでしょうか?
緑内障治療の目的は、 一度失われた視野を手術によって元へ戻すことではなく、 眼圧を下げることで、 これから失われる可能性のある視野をできるだけ守ること です。
したがって「まだ見えているから手術は早い」とも、 「点眼を3本使っているから手術」とも一律には判断できません。 現在の障害だけではなく、 このままの治療で将来どうなる可能性があるのか を考える必要があります。
緑内障手術を検討する主な5つのタイミング
点眼を使っても目標眼圧まで下がらない
複数の点眼薬を使用していても、 視神経・視野を長期的に守るために必要と考える眼圧まで 下がらないことがあります。
この場合、点眼薬の組み合わせを見直したり、 適応があればSLTを検討したりします。 それでも必要な眼圧下降が得られない場合には、 手術の必要性が高まります。
OCT・視野で進行が確認される
眼圧の数字が下がっていても、 OCTで神経組織の変化が続いたり、 視野検査で障害が拡大したりすることがあります。
これは「眼圧が下がっていない」という意味ではなく、 現在の眼圧ではその視神経にとってまだ十分低くない可能性 を考える材料になります。
進行速度が速い
現在の視野障害が同じ程度でも、 10年間ほとんど変化しない方と、 数年間で明らかに変化する方では 将来のリスクが異なります。
現在の重症度だけではなく、 どのくらいの速さで悪化しているのか が治療強化を考える重要な情報になります。
点眼治療を長期間続けにくい
点眼本数が多い、充血・刺激・かぶれが続く、 点眼を忘れやすい、 手指の状態などによってうまく点眼できないなど、 継続そのものが難しくなることがあります。
点眼の負担が治療継続を妨げている場合には、 点眼の変更だけでなくSLTや手術も含めて 治療戦略を見直すことがあります。
病期から、より大きな眼圧下降が必要
すでに視野障害が進行している場合や、 中心部に近い視野を守る必要がある場合などでは、 低い目標眼圧が必要になることがあります。
このような場合は、 点眼を何段階も追加して長期間待つことが 必ずしも最適とは限りません。 病状によっては手術を早い段階から検討します。
反対に、手術を急がないことがあるのはどんなとき?
「緑内障と診断された=いずれ必ず手術」 というわけではありません。
十分に安定している場合には、点眼やSLTを続けながら 定期的に眼圧・OCT・視野を確認することが適切な場合があります。
手術時期は「今の視野」だけでなく、将来の視野から考えます
同じ視野検査結果でも、 手術を考える必要性が同じとは限りません。
| 確認する項目 | 何を見るか | 手術時期との関係 |
|---|---|---|
| 現在の視野 | どの程度の視野が残っているか | 残っている視野を守るために必要な治療強度を考えます。 |
| 進行速度 | 過去の視野・OCTからどの程度変化しているか | 速い場合は治療強化を早く考える材料になります。 |
| 現在の眼圧 | 治療後にどこまで下がっているか | 目標眼圧との差を確認します。 |
| 治療前眼圧 | 治療開始前から何%程度下がったか | 十分な下降量が得られているかを考えます。 |
| 病期 | 初期・中期・進行例など | 残っている視機能が少ない場合は、より低い目標眼圧が必要になることがあります。 |
| 年齢・今後の期間 | 将来どのくらいの期間、視機能を維持する必要があるか | 年齢だけではなく、進行速度と組み合わせて考えます。 |
| 点眼負担 | 副作用、点眼本数、点眼忘れ、継続可能性 | 実際に続けられる治療かどうかも重要です。 |
OCTと視野検査|「1回悪かった」だけで手術を決めない理由
手術を検討するうえで重要なのは、 OCTや視野の経時的な変化です。
OCTは視神経につながる神経組織の「構造」を評価し、 視野検査は実際にどの場所がどの程度見えているかという 「機能」を評価します。
視野検査は疲労や集中力などによって結果が変動することがあります。 OCTも撮影位置、近視、画像の分割エラーなどによって 変化して見える場合があります。 必要に応じて再検査し、 過去画像、眼圧、視神経所見などを含めて本当に進行しているかを確認します。
点眼 → SLT → 手術は、必ずこの順番とは限りません
緑内障治療では、 点眼薬、SLT、手術という複数の方法があります。
しかし、 「点眼を最大限まで増やして、それでも駄目ならSLT、 さらに駄目なら手術」 という一本道を全員が通るわけではありません。
眼圧が正常でも、手術を検討することがあります
正常眼圧緑内障では、 治療前から眼圧が一般的な正常範囲に入っています。
そのため、 「21mmHg以下だから手術は不要」 という考え方はできません。
Collaborative Normal-Tension Glaucoma Studyでは、 正常眼圧緑内障に対して治療前から約30%の眼圧下降を目標とする介入が検討されました。 眼圧下降は重要な治療手段であることを示した代表的研究ですが、 「正常眼圧緑内障なら全員30%下げればよい」という意味ではありません。
同研究では白内障の影響も結果の解釈に関係しており、 すべての未治療例が同じ速度で進行したわけでもありません。 現在は病期、進行速度、治療前眼圧などから 患者さんごとに目標を考えることが重要です。
進行した緑内障では「できるだけ手術を先送り」が最適とは限りません
手術には合併症や術後管理があるため、 必要のない方へ早く手術を行うことが目的ではありません。
しかし一方で、 進行した緑内障で非常に低い目標眼圧が必要な場合に、 点眼治療を何段階も続けながら長期間待つことが 必ず最善とは限りません。
そのため進行例では、 現在の治療を続けるリスクと、手術を行うリスクの両方を比較します。
Treatment of Advanced Glaucoma Study(TAGS)では、 新たに診断された進行開放隅角緑内障を対象として、 初期から線維柱帯切除術を行う群と薬物治療群が比較されました。 5年成績では、手術群でより低い平均眼圧と、 視野進行について有利な結果が報告されています。
これは「進行緑内障なら全員すぐ手術」という意味ではありません。 一方で、 病期によっては手術を比較的早い時点から選択肢として提示する合理性がある ことを示す重要な研究です。
文献から考える|緑内障手術の「時期」をどう考えるか
緑内障手術のタイミングを考えるとき、 「どの薬を何本使ったら手術」 といった単純なルールだけでは不十分です。
代表的な臨床研究を並べると、 眼圧下降の重要性、進行速度、病期、SLTの位置づけ、早期手術を考えるべき症例 が見えてきます。
治療の原則は眼圧下降
日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン第5版では、 緑内障治療の原則を眼圧下降とし、 薬物、レーザー、手術を病型や病状に応じて選択する考え方が示されています。
「手術は必ず最後」という一律の順序ではなく、 患者さんの状態に応じた治療選択が基本です。
眼圧下降量と進行リスクは関連します
Early Manifest Glaucoma Trialでは、 治療を受けた群で進行リスクが低下しました。
研究内の解析では、 初期の眼圧下降が1mmHg大きいごとに、 進行リスクがおよそ10%低い関連が報告されています。
ただしこれは、 「誰でも1mmHg下げれば必ず10%安全になる」という 個人への予測値ではありません。 眼圧を十分に下げることが重要であるという集団データです。
正常眼圧でも、さらに眼圧を下げる意味があります
正常眼圧緑内障を対象としたCNTGSでは、 治療前眼圧から約30%下降させる治療戦略が検討されました。
眼圧が「正常範囲」でも、 進行している視神経にとっては十分低くない可能性があることを考える 重要な研究です。
一方で白内障による視野への影響などもあり、 30%という数字を全患者へ固定して用いるものではありません。
SLTは「点眼を最大まで使った後だけ」の治療ではありません
治療歴のない開放隅角緑内障・高眼圧症を対象としたLiGHT Trialでは、 初期治療としてSLTを使用する治療戦略が 点眼治療と比較され、6年間の成績も報告されています。
これはSLTを 「手術直前の最後のレーザー」とだけ位置づけるのではなく、 より早い治療段階から検討できることを示す根拠の一つです。
ただし、非常に低い目標眼圧を必要とする進行例へ 同じ結果をそのまま当てはめることはできません。
病期によって、初期手術の意味が変わる可能性があります
Collaborative Initial Glaucoma Treatment Studyでは、 新規開放隅角緑内障に対する初期薬物療法と 初期線維柱帯切除術が比較されました。
長期解析では、 ベースラインでより進行した視野障害があった患者群において、 初期手術群で視野進行が少なかったという解析結果が報告されています。
サブグループ解析であるため慎重な解釈が必要ですが、 「病期」が手術時期を考えるうえで重要であることを示唆します。
進行例では早期手術が合理的な場合があります
TAGSでは新たに診断された進行開放隅角緑内障を対象に、 初期線維柱帯切除術と薬物治療が比較されました。
5年時点で平均眼圧は 手術群約12.1mmHg、薬物治療群約14.8mmHgで、 視野についても手術群で有利な結果が報告されています。
すべての緑内障で早期手術を意味するものではありませんが、 進行例では手術を治療の後半まで必ず温存する必要はない、 という重要な判断材料になります。
「目薬が効かない」と思ったとき、手術前に確認したいこと
「眼圧が下がらない」「視野が悪くなった」と感じても、 1回の結果だけですぐ手術と決めるわけではありません。
- 点眼薬を指示された回数で使用できているか
- 点眼を忘れる日が多くないか
- 点眼方法が適切か
- 点眼による副作用で使用を中断していないか
- 現在の眼圧が本当に目標眼圧へ届いていないか
- 眼圧の測定値が一時的な変動ではないか
- OCTの変化が撮影・解析誤差ではないか
- 視野悪化が再検査でも再現されるか
- 白内障など、視野検査へ影響する別の要因がないか
- 隅角や緑内障の病型に合った治療を行っているか
「いつ手術するか」と「どの手術をするか」は別の判断です
手術が必要と判断されても、 すべての患者さんが同じ緑内障手術を受けるわけではありません。
まずこのページで説明したように 手術が必要な段階かを考えます。
その次に、 目標眼圧、病型、隅角、白内障、 過去の手術歴などから、 どの手術方法が適しているかを検討します。
有田眼科では、検査結果の「変化」を確認して治療を考えます
福岡市中央区小笹の有田眼科では、 眼圧の数字だけで手術を判断するのではなく、 OCT、視野検査、視神経、隅角、 過去からの眼圧推移、点眼治療、 白内障などを確認します。
緑内障の診療・手術を担当する医師

緑内障では、 「現在の眼圧が何mmHgか」だけではなく、 その眼圧で視神経・視野を将来にわたって守れるかを考えることが大切です。
有田眼科では、 OCT・視野・眼圧・視神経・隅角などの経過を確認し、 点眼を続けるのか、SLTを検討するのか、 手術へ進むのかを判断します。
手術が必要な場合には、 さらに必要な目標眼圧や白内障、 過去の治療歴などから術式を検討します。
緑内障手術のタイミングについてよくある質問
緑内障は何mmHgになったら手術が必要ですか?
全員共通の眼圧値はありません。 治療前眼圧、現在の眼圧、病期、 OCT・視野の進行速度などから、 患者さんごとの目標眼圧を考えます。
目薬を何本使ったら手術になりますか?
点眼本数だけでは決まりません。 1~2剤でも目標眼圧に届かず進行リスクが高ければ レーザーや手術を検討する場合があります。 一方、複数点眼でも病状が安定していれば その治療を継続する場合があります。
目薬が効かなくなったらすぐ手術ですか?
必ずしもすぐ手術とは限りません。 点眼方法、薬剤変更、SLTの適応、 目標眼圧、OCT・視野の進行などを確認して判断します。
視野が末期になるまで手術を待つのでしょうか?
いいえ。 緑内障手術は末期だけの治療ではありません。 現在の治療では将来の視野を十分守れないと考えられる場合には、 末期になる前でも手術を検討します。
正常眼圧緑内障でも手術をすることがありますか?
あります。 眼圧が一般的な正常範囲でも、 OCTや視野障害が進行していれば、 さらに低い目標眼圧を設定し、 手術を含めた治療強化を検討することがあります。
SLTをすれば緑内障手術をしなくて済みますか?
SLTで十分な眼圧下降が得られ、 OCT・視野が安定すれば、 切開手術を急がず経過をみられる場合があります。 一方、必要な目標眼圧に届かない場合や 進行が続く場合には手術を検討します。
視野検査が1回悪かったら手術ですか?
通常は1回の検査だけでは判断しません。 視野検査にはばらつきがあるため、 必要に応じて再検査し、 過去との傾向、OCT、眼圧、視神経などを組み合わせます。
進行した緑内障では最初から手術を行うことがありますか?
病状によってはあります。 すでに視野障害が進んでおり、 より低い目標眼圧を早く達成する必要がある場合には、 手術を比較的早い段階から検討することがあります。
緑内障手術をすると失った視野は戻りますか?
現在の治療では、 緑内障によってすでに失われた視野を 元へ戻すことは困難です。 手術の目的は眼圧を下げ、 今後の視神経・視野障害の進行をできるだけ抑えることです。
まだ手術を受けると決めていなくても相談できますか?
手術を決めていない段階でも、 現在の眼圧、OCT、視野、隅角、 点眼治療などを確認し、 現在の治療を続ける段階なのか、 レーザーや手術を考える段階なのかを相談できます。
緑内障についてさらに詳しく見る
主な医学文献・参考資料
緑内障治療、目標眼圧、薬物・レーザー・手術治療についての国内ガイドライン。
PubMedで確認する眼圧下降と緑内障進行リスクとの関係を検討した代表的研究。
PubMedで確認する正常眼圧緑内障における眼圧下降と進行を検討した代表的研究。
PubMedで確認する開放隅角緑内障・高眼圧症に対する初期SLTと点眼治療の長期比較。
PubMedで確認する開放隅角緑内障における初期手術と薬物療法、 視野進行を検討した長期研究。
PubMedで確認する新規診断の進行開放隅角緑内障に対する 初期線維柱帯切除術と薬物治療を比較した研究。
PubMedで確認する※各研究では対象患者、病型、重症度、治療方法、 評価項目、観察期間が異なります。 研究結果を個々の患者さんへそのまま当てはめて 手術時期を決定するものではありません。
福岡で緑内障手術のタイミングを相談したい方へ
「目薬を続けているけれど、このままでよいのか」 「SLTの次は手術なのか」 「手術と言われたが、本当に今必要なのか」 と不安を感じる方もいます。
福岡市中央区小笹の有田眼科では、 有田眼科 院長 有田 量一が、 現在の眼圧だけではなく、 OCT、視野、進行速度、隅角、点眼治療、 白内障、これまでの治療歴などを確認し、 緑内障治療を検討します。