MIGSは一つの手術名ではなく、 目への負担をできるだけ抑えながら眼圧下降を目指す 「低侵襲緑内障手術」の総称です。
特に、眼内から線維柱帯やシュレム管など 目が本来持っている房水の流出経路へアプローチする治療 がMIGSとしてよく知られています。
福岡市中央区小笹の有田眼科では、 白内障手術と同時に行うiStent inject Wや、 線維柱帯などへ眼内からアプローチする流出路再建術などを、 病型・隅角・目標眼圧などから検討しています。
30秒でわかる|MIGSとは?
- MIGSはMinimally Invasive Glaucoma Surgeryの略です。
- 一つの術式ではなく、複数の低侵襲緑内障手術をまとめた呼び方です。
- iStentや眼内から行う流出路手術などが代表的です。
- 結膜を大きく切開せず、本来の房水流出路を利用する方法があります。
- 白内障手術と同時に行いやすい術式もあります。
- 一方、非常に低い目標眼圧が必要な方ではMIGSだけでは不十分な場合があります。
- プリザーフロや線維柱帯切除術などの濾過手術とは、治療の仕組みと位置づけが異なります。
MIGSとは何ですか?
眼圧は、目の中で作られる房水の量と、 房水が外へ流れ出る量のバランスによって決まります。
開放隅角緑内障では、 房水の出口である線維柱帯からシュレム管へ続く 流出路の抵抗が眼圧上昇に関係します。
MIGSの多くは、この本来の流出経路を 眼内から利用・改善することで眼圧下降を目指します。
実は「MIGS」の定義は世界中で完全に統一されているわけではありません
MIGSという言葉は広く使われていますが、 どの術式までMIGSに含めるかは、 文献や診療ガイドラインによって必ずしも同じではありません。
主に結膜を温存しながら眼内から房水流出路へアプローチする iStentや流出路再建術を中心に説明します。
2025年に発表された診療ガイドラインのスコーピングレビューでも、 MIGSに関する推奨は各国ガイドライン間で十分統一されておらず、 日本緑内障学会の第5版ガイドラインにも MIGS全体を一括した具体的推奨はありません。
したがって「MIGSだからこの患者さんに適している」と判断するのではなく、 個々の術式の適応と必要な目標眼圧を確認すること が重要です。
MIGSは何が「低侵襲」なのでしょうか?
眼内からアプローチできる
iStentや一部の流出路再建術では、 角膜側の小さな切開から器具を入れ、 隅角を確認しながら手術します。
結膜を温存できる
本来の房水流出路を利用する手術では、 線維柱帯切除術のように 結膜下へ濾過胞を作らない方法があります。
白内障手術と組み合わせられる術式がある
iStent inject Wは、 白内障手術で作成した角膜切開から操作し、 白内障手術と同時に行います。
将来の手術選択肢を残しやすい
結膜を温存できる手術では、 将来より大きな眼圧下降が必要になった際に 濾過手術を検討する余地を残せることがあります。
有田眼科で行うMIGS・流出路手術
有田眼科では、現在の眼圧、目標眼圧、 OCT・視野の進行、緑内障の病型、 隅角、白内障などを確認して治療方法を検討しています。
iStent inject Wとは?
iStent inject Wは、 線維柱帯へ非常に小さなステントを留置して、 前房からシュレム管への房水流出を改善する緑内障手術用デバイスです。
有田眼科では、 白内障手術を予定している開放隅角緑内障の患者さんについて、 病型、隅角、現在の眼圧、目標眼圧、点眼治療などを確認し、 iStentを同時に行う意味があるかを検討しています。
流出路再建術とは?
流出路再建術は、 眼圧上昇に関係する線維柱帯などへ 眼内からアプローチする手術です。
線維柱帯を切開するなどして、 房水がシュレム管へ流れやすくなるようにし、 目が本来持つ流出経路を再び利用することを目指します。
流出路再建術は本来の房水排出経路を利用します。 線維柱帯切除術は前房から結膜下へ新しい房水流出路を作る濾過手術です。
MIGSが検討されやすいのはどんな場合?
実際の適応は術式ごとに異なりますが、 MIGSや眼内から行う流出路手術を検討する際には 次のような条件を確認します。
開放隅角である
線維柱帯やシュレム管へアプローチする術式では、 隅角が十分に確認できることが重要です。
比較的穏やかな眼圧下降でも治療目標を満たせる
非常に低い目標眼圧を必要とする場合は、 MIGS以外の手術の方が適する可能性があります。
白内障手術を予定している
iStent inject Wでは、 白内障手術と同時に緑内障治療を行えることが大きな特徴です。
点眼負担も考慮したい
眼圧だけではなく、 毎日の点眼本数を減らせる可能性を治療目標の一つとして考える場合があります。
MIGSだけでは十分でないことがあります
MIGSは低侵襲性が重要な利点ですが、 「低侵襲だからすべての緑内障に最適」という意味ではありません。
つまり、 「できるだけ負担の小さい手術を選ぶこと」と 「視野を守るために必要な眼圧まで下げること」の 両方を考える必要があります。
MIGS・濾過手術・SLTは何が違う?
| 治療 | 分類 | 主な作用場所 | 特徴 | 考え方 |
|---|---|---|---|---|
| SLT | レーザー | 線維柱帯 | 眼球を切開しない | 点眼追加前などにも検討 |
| iStent inject W | MIGS | 線維柱帯~シュレム管 | 白内障手術と同時に実施 | 本来の房水流出路を利用 |
| 流出路再建術 | 眼内流出路手術 | 線維柱帯・シュレム管など | 結膜を温存しやすい | 本来の房水流出路を改善 |
| プリザーフロ | 濾過手術 | 前房~結膜下 | デバイスで新しい流出路を作る | より大きな眼圧下降が必要な場合など |
| 線維柱帯切除術 | 濾過手術 | 前房~結膜下 | 代表的な濾過手術 | より低い目標眼圧が必要な場合など |
病型、目標眼圧、隅角、OCT・視野、 白内障、点眼、過去の手術歴などによって適切な選択は変わります。
文献から考える|MIGSはどのような位置づけの手術か
MIGSについて医学文献を読むときは、 「低侵襲で安全」という言葉だけでなく、 対象となった患者さん・目標眼圧・白内障手術併用・点眼減少効果 を確認することが重要です。
MIGSという名称だけでは手術適応は決まりません
日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン第5版では、 緑内障治療は病型・病期などを考慮し、 薬物、レーザー、手術から治療方針を決定する考え方が示されています。
MIGSであるという理由だけで選択するのではなく、 患者さんに必要な眼圧下降を達成できる治療かどうかが重要です。
MIGSの定義・推奨は国際的にも完全には統一されていません
MIGSを扱う13の診療ガイドラインを検討した 2025年のスコーピングレビューでは、 手術・デバイスについての推奨が十分統一されていないことが報告されています。
そのため「MIGSなら同じ」と扱わず、 個別の術式について有効性・適応・安全性を考える必要があります。
日本では白内障+軽度~中等度緑内障でMIGSが広く選択されています
日本緑内障学会評議員50人を対象にした2024年の診療選好調査では、 白内障を伴う未手術の軽度~中等度原発開放隅角緑内障で、 白内障手術+MIGSを選ぶ回答が94.6%でした。
これは比較試験による優越性の証明ではなく、 日本の緑内障専門医の診療選択を調査した結果です。
iStentでは点眼負担軽減も重要なアウトカムです
軽度~中等度緑内障と白内障を対象とした 2024年のランダム化比較試験では、 白内障手術+iStent群は白内障手術単独群より 24か月時点の緑内障点眼薬数が少なくなりました。
一方、4週以降の眼圧については群間の有意差がありませんでした。 MIGSを評価するときは、 眼圧だけでなく点眼数や対象患者も確認する必要があります。
MIGSのメリットだけでなく、限界とリスクも理解しておくことが大切です
MIGSは低侵襲性を重視した手術ですが、 合併症がまったくない治療ではありません。
術式によって異なりますが、 一時的な眼圧上昇、前房出血、 炎症、追加の点眼治療が必要になることなどがあります。 デバイスを使用する手術では、 留置位置や閉塞などが問題になる場合もあります。
また、十分な眼圧下降が得られなかった場合には、 後から別の緑内障手術を検討することがあります。
白内障と緑内障がある場合は「同時にできるか」だけでは決めません
白内障と緑内障を合併している患者さんでは、 白内障手術だけを行うのか、 MIGSを同時に行うのかを検討します。
ここで重要なのは、 「iStentを入れられるか」だけではなく、 iStentを追加することでその患者さんの治療目標へ近づけるか です。
眼圧、OCT、視野、目標眼圧、点眼本数、 隅角、緑内障の進行度などから判断します。
有田眼科のMIGS・緑内障手術
緑内障の診療・手術を担当する医師

MIGSは「できるだけ小さな手術を選ぶ」こと自体が目的ではありません。
緑内障治療の目的は、 必要な眼圧まで下げて、 将来の視神経・視野障害の進行をできるだけ抑えることです。
有田眼科では、 目標眼圧、OCT、視野、進行速度、隅角、 白内障、点眼治療、過去の手術歴などを確認し、 MIGSが適しているのか、 別の緑内障手術が必要なのかを検討します。
MIGSについてよくある質問
MIGSとは何の略ですか?
Minimally Invasive Glaucoma Surgeryの略で、 一般に低侵襲緑内障手術と呼ばれます。 一つの手術名ではなく、複数の術式をまとめた呼び方です。
MIGSとiStentは同じものですか?
同じ意味ではありません。 MIGSは低侵襲緑内障手術という治療群の名称で、 iStent inject WはMIGSに含まれる代表的なデバイスの一つです。
MIGSと流出路再建術は何が違いますか?
MIGSという言葉の範囲は文献によって異なります。 流出路再建術の中には、 結膜を温存して眼内から線維柱帯へアプローチする 低侵襲な術式があります。 実際には術式名と仕組みを確認して考えることが重要です。
MIGSとプリザーフロは同じですか?
このページでは分けて説明しています。 iStentなどは本来の房水流出経路を利用しますが、 プリザーフロは前房から結膜下へ 新しい房水流出路を作る濾過手術です。
MIGSなら線維柱帯切除術より安全ですか?
MIGSは低侵襲性を重視した手術ですが、 合併症がないわけではありません。 また、必要な眼圧下降が大きい場合には、 線維柱帯切除術などの濾過手術が適する場合があります。 必要な効果とリスクの両方から判断します。
MIGSをすれば点眼薬をやめられますか?
必ず中止できるわけではありません。 点眼本数を減らせる場合もありますが、 術後眼圧と目標眼圧によっては 点眼を継続・再開する場合があります。
進行した緑内障でもMIGSを受けられますか?
病型や必要な目標眼圧によります。 進行例で非常に低い眼圧が必要な場合には、 MIGSだけでは必要な眼圧下降を得にくく、 濾過手術など別の治療を検討する場合があります。
白内障手術とMIGSを同時にできますか?
iStent inject Wは白内障手術と同時に行う手術です。 ただし、白内障があるすべての緑内障患者さんが対象になるわけではなく、 病型、隅角、眼圧、目標眼圧などから適応を判断します。
緑内障治療についてさらに詳しく見る
主な医学文献・参考資料
緑内障の診断、目標眼圧、薬物・レーザー・手術治療についての国内ガイドライン。
PubMedで確認するMIGSを扱う診療ガイドラインの推奨内容を比較したスコーピングレビュー。
PubMedで確認する日本緑内障学会評議員を対象に、MIGSを含む緑内障手術選択を調査した研究。
PubMedで確認する軽度~中等度緑内障患者における白内障手術単独とiStent併用を比較したランダム化試験。
PubMedで確認する※MIGSには複数の術式があり、研究ごとに対象患者、 緑内障の病型・重症度、併用手術、成功の定義、 観察期間が異なります。研究結果を個々の患者さんへ そのまま当てはめるものではありません。
福岡でMIGS・緑内障手術について相談したい方へ
「白内障手術と一緒にiStentができるのか」 「MIGSなら負担が少ないと聞いた」 「流出路再建術と濾過手術の違いが分からない」 といった段階からご相談いただけます。
福岡市中央区小笹の有田眼科では、 有田眼科 院長 有田 量一が、 眼圧、目標眼圧、OCT、視野、隅角、 白内障、点眼治療、過去の手術歴などを確認し、 MIGSを含めた治療方法を検討します。