車は買い替えられる。
でも、眼内レンズは?
多焦点眼内レンズについて「費用が高い」と感じる方へ。 このページでは、価格だけではなく、 これから10年・15年の生活、スマートフォン、運転、仕事、読書、 そしてメガネとの付き合い方から眼内レンズ選びを考えます。
車は買い替えられる。でも眼内レンズは?
白内障手術で多焦点眼内レンズについてご説明すると、 「多焦点レンズは高いですね」とおっしゃる患者さんがいます。
確かに、多焦点眼内レンズでは、 単焦点眼内レンズと比べて患者さんの費用負担が大きくなる場合があります。
しかし、眼内レンズを「今いくらするのか」だけで考えてよいのでしょうか。
数百万円の車を購入しても、10年、15年と乗れば、 いずれ買い替えることがあります。 スマートフォンも、パソコンも、家電も同じです。
一方、白内障手術で眼の中に入れる眼内レンズは、 通常、長期間そのまま眼内で使用することを前提として選びます。
医学的な理由があれば交換・摘出することはあります。 しかし、 「5年後に新製品が出たら交換しよう」 と、車やスマートフォンのように気軽に入れ替えることを 前提としたものではありません。
また、手術後の時間経過や眼内レンズを支えている組織の状態などにより、 交換手術の方法や難易度が変わる場合があります。
「スマホを見ない生活」を前提にレンズを選ぶ時代ではありません
以前であれば、 「遠くが見えればよい」 「新聞を読むときだけ老眼鏡を掛ければよい」 と考える方も多かったかもしれません。
しかし、現在の生活ではスマートフォンやデジタル画面を見ることが 日常の一部になっています。
近方だけではありません。 パソコン、タブレット、車のナビ、料理、家事などでは 中間距離を見る機会も増えています。
さらに考えていただきたいのが、10年後、15年後です。
今はスマートフォンをそれほど使わない方でも、 将来は病院予約、行政手続き、交通、買い物など、 今以上にデジタル画面を見る機会が増えているかもしれません。
眼内レンズは、その視点からも考えてみてください。
15年間の「メガネ代」より、15年間の「メガネを使う生活」を考える
単焦点眼内レンズを遠方に合わせた場合、 一般的には近くを見るときに老眼鏡などが必要になります。
もちろん、単焦点眼内レンズにもさまざまな合わせ方があり、 すべての方が同じメガネの使い方になるわけではありません。
例えば、15年間のメガネ代を単純計算すると
メガネの価格・買い替え頻度には大きな個人差があります。 また、多焦点眼内レンズを選んでも特定の作業ではメガネが必要になる場合があります。
本当に考えたいのは、メガネ代だけではありません。
朝、スマートフォンを見るためにメガネを掛ける。 テレビを見るために外す。 新聞を読むためにまた掛ける。 スーパーで商品の表示を見る。 QRコードを読む。 パソコン用に掛け替える。
一回一回は小さな手間でも、それが毎日、10年、15年続きます。
遠方・中間・近方など複数の距離を裸眼で見られる範囲を広げ、 メガネに頼る場面を減らせる可能性があること も、大きな特徴です。
多焦点眼内レンズは「メガネが絶対不要になるレンズ」ではありません
多焦点眼内レンズを入れれば、 必ずメガネが不要になるわけではありません。
多焦点眼内レンズは、 遠方・中間・近方など複数の距離を裸眼で見られる範囲を広げ、 メガネへの依存を減らすことを目指す眼内レンズです。
期待できること
- 複数の距離を裸眼で見られる範囲を広げる
- 老眼鏡などを使用する場面を減らせる可能性
- 生活に応じて異なる光学設計を検討できる
知っておきたいこと
- 細かな文字ではメガネが必要になる場合がある
- ハロー・グレアを感じる場合がある
- コントラストの感じ方が単焦点と異なることがある
- すべての眼に適しているわけではない
現在は「単焦点か多焦点か」だけの二択ではありません
現在では、遠方・中間・近方の複数距離を重視するタイプ、 遠方から中間を中心に焦点深度を広げるタイプなど、 特徴の異なる眼内レンズがあります。
有田眼科で現在取り扱っている眼内レンズについては、 製品・種類をまとめた既存ページをご覧ください。
「多焦点はハロー・グレアが怖い」と聞いたのですが
多焦点眼内レンズについて調べると、 「ハロー」「グレア」という言葉を目にすることがあります。
ハロー
夜間のライトなどの周囲に、 輪のような光を感じる現象です。
グレア
光がにじむ、広がる、まぶしく感じるなどの 光視症をいいます。
医学的には、多焦点眼内レンズでは単焦点眼内レンズと比較して、 このような光の症状が起こりやすいことが知られています。
したがって、 「今の多焦点眼内レンズならハロー・グレアは全くありません」 とは説明できません。
一方、実際の術後診療での印象は?
現在当院で採用している多焦点眼内レンズを使用した患者さんを術後に診察していると、 ハロー・グレアを強く訴え続ける患者さんは、 以前多焦点眼内レンズについて一般的に抱かれていたイメージほど 多くないという印象があります。
もちろん、光の感じ方には個人差があります。
夜間運転が非常に多い方、 光のにじみに敏感な方、 コントラストや夜間の見え方を特に重視する方では、 より慎重に検討する必要があります。
また、術後早期に光の輪などを感じても、 時間経過とともに気になりにくくなる方もいます。
メリットと弱点を理解したうえで、自分が何を優先するかを考えることが大切です。
一番高い眼内レンズが、一番良い眼内レンズとは限りません
有田眼科では、 高価な眼内レンズ=その患者さんに最も良い眼内レンズ とは考えていません。
スマートフォン
できるだけ裸眼で画面を見たいのか。 近方の見え方をどこまで重視するかを考えます。
パソコン
長時間のデスクワークでは、 中間距離の見え方が重要になります。
夜間運転
夜のライトやコントラストを どの程度重視するか確認します。
読書
本・新聞などを読む距離と、 メガネを使ってもよい場面を考えます。
家事・料理
手元だけでなく、 少し離れた中間距離も頻繁に使います。
趣味
ゴルフ、旅行、手芸、写真など、 手術後も続けたい生活を確認します。
眼の状態も非常に重要です
生活上の希望だけで多焦点眼内レンズを決めるわけではありません。
角膜、乱視、眼表面、黄斑、網膜、視神経など、 白内障以外の状態も確認する必要があります。
眼の状態によっては、 多焦点眼内レンズのメリットを十分に得にくい場合があります。 その場合には、単焦点眼内レンズなど別の選択肢をおすすめすることがあります。

MESSAGE FROM DOCTOR
有田眼科 院長 有田 量一
「先生だったら、単焦点と多焦点のどちらにしますか?」
患者さんからよく聞かれる質問です。
これは簡単には答えられません。 眼内レンズ選びには、すべての人に共通する一つの正解がないからです。
私自身が選ぶ立場であっても、まず自分の眼の状態を確認します。
そのうえで、 スマートフォンをどのくらい見るのか、 パソコンをどのくらい使うのか、 読書をするのか、 夜間運転をするのか、 仕事や趣味では何を見るのかを考えます。
そして、 メガネに頼る場面を減らすことに、どれだけ価値を感じるのか。
眼の状態が多焦点眼内レンズに適していて、 できるだけメガネに頼らない生活を希望するのであれば、 手術当日だけではなく、 その後の10年、15年を考えて選択します。
10年後のあなたは、何を見ているでしょうか?
今は仕事でパソコンを使っている方も、 10年後には生活が変わっているかもしれません。
旅行へ行く。 孫や家族の写真を見る。 スマートフォンで連絡する。 動画を見る。 電子書籍を読む。 病院を予約する。 地図を見ながら出掛ける。 ネットで買い物をする。
逆に、今以上にデジタル機器を使う生活になっている可能性もあります。
未来を正確に予測することはできません。
それでも、 スマートフォンやデジタル画面をほとんど見ない生活へ戻ることを 前提に眼内レンズを選ぶ必要はない と私たちは考えています。
多焦点が良い、単焦点が悪い、という話ではありません
| 考え方 | 単焦点眼内レンズ | 多焦点・焦点深度拡張型 |
|---|---|---|
| 主な特徴 | 主に一つの距離へピントを合わせます | 複数距離・焦点範囲を広げることを目指します |
| メガネ | 合わせていない距離では必要になることがあります | 使用する場面を減らせる可能性があります |
| 見え方 | 光学的にシンプルで見え方の質を重視しやすい | 複数距離を重視できる一方、光視症に注意が必要です |
| 向いている可能性 | メガネ使用に抵抗が少ない、夜間視などを重視する方 | 複数距離を裸眼で見たい、眼鏡依存を減らしたい方 |
どちらにもメリットがあります。 どちらにも弱点があります。
「私の眼と、これからの生活にはどの眼内レンズが合っていますか?」
という視点で考えることが大切です。
15年間の「メガネ代」ではなく、15年間の「生活」で考える
多焦点眼内レンズを選べば、 15年間のメガネ代が必ず不要になるわけではありません。
ですから、 「メガネ代と比較すれば多焦点眼内レンズの方がお得です」 という話をしたいわけではありません。
有田眼科がお伝えしたいのは、 15年分のメガネ代を計算することではなく、 これからの15年をどのような見え方で過ごしたいかを 考えてほしいということです。
車は買い替えることができます。
スマートフォンも買い替えることができます。
メガネも作り替えることができます。
しかし眼内レンズは、 新しい製品が登場するたびに交換することを前提としたものではありません。
それが、有田眼科の眼内レンズ選びです。
多焦点眼内レンズについてよくある質問
多焦点眼内レンズにすればメガネは不要になりますか?
必ずしも不要になるわけではありません。 多焦点眼内レンズは、複数の距離を裸眼で見られる範囲を広げ、 メガネへの依存を減らすことを目指します。 細かな文字や特定の作業などではメガネが必要になる場合があります。
高い眼内レンズほど良く見えますか?
価格だけで適した眼内レンズは決まりません。 眼の状態、スマートフォン、パソコン、読書、夜間運転、 趣味などによって適するレンズは異なります。
多焦点眼内レンズのハロー・グレアは強いですか?
感じ方には個人差があります。 医学的には単焦点眼内レンズよりハロー・グレアが生じやすいことが 報告されています。一方、現在当院で採用しているレンズの術後診療では、 強い症状を訴え続ける患者さんはそれほど多くないという印象です。 夜間運転などを重視する方は術前に詳しく相談します。
多焦点眼内レンズが向かない人もいますか?
あります。 角膜、乱視、黄斑、網膜、視神経などの状態や、 希望する見え方によっては単焦点眼内レンズなど 別の選択肢が適している場合があります。
今はスマートフォンをあまり使いません。それでも近くを考える必要がありますか?
現在の使用頻度だけで決める必要はありません。 眼内レンズは長期間使用することを前提とするため、 10年・15年後の生活やデジタル機器を使用する可能性まで含めて 考えることも一つの方法です。
有田眼科
- 医師名
- 有田 量一
- 住所
- 〒810-0033 福岡県福岡市中央区小笹2丁目2-3
- 電話
- 092-707-2132
- 駐車場
- 15台
- 診療案内
- 外来診療から日帰り手術まで幅広く対応
有田眼科 有田 量一
参考資料
- European Society of Cataract and Refractive Surgeons(ESCRS) 「ESCRS Recommendations for Cataract Surgery」
- Rosen E, et al. Effectiveness of multifocal and monofocal intraocular lenses for cataract surgery and lens replacement: a systematic review and meta-analysis.
- de Silva SR, et al. Multifocal versus monofocal intraocular lenses after cataract extraction. Cochrane Database of Systematic Reviews.
※眼内レンズの適応や術後の見え方には個人差があります。 実際に選択できる眼内レンズ、費用、手術内容については 診察時にご確認ください。