白内障と網膜・黄斑の病気が重なっているときは、
「どこが見えにくさの原因か」から確認します
白内障がある方に黄斑上膜、黄斑円孔、 網膜剥離などの網膜疾患が見つかることがあります。 この場合、白内障だけを手術すれば すべての見えにくさが改善するとは限りません。 有田眼科では、白内障の濁りだけでなく、 散瞳眼底検査やOCTで網膜・黄斑まで確認し、 白内障手術を先に行うのか、 網膜硝子体治療を優先するのか、 同時手術を検討するのかを考えます。
かすみは白内障、ゆがみは黄斑上膜、 中心部の欠けは黄斑円孔など、 複数の病気が同時に見え方へ影響していることがあります。
白内障手術前に「網膜まで見る」理由
水晶体は目の前方にあり、網膜は眼球の奥にあります。 白内障手術で治療するのは水晶体です。 網膜や黄斑に別の病気があれば、その病気は白内障手術だけでは治りません。
白内障による見えにくさ
水晶体の濁りによって、 かすむ、まぶしい、全体にぼやける、 眼鏡を替えても見えにくいなどの症状が起こります。
白内障手術では濁った水晶体を取り除き、 眼内レンズへ置き換えます。
網膜・黄斑による見えにくさ
黄斑上膜や黄斑円孔などでは、 網膜そのものの形や機能に異常が生じます。
物がゆがむ、中心が欠ける、 文字の一部が読みづらいなどの症状は、 白内障を取り除いても残る可能性があります。
網膜・黄斑・視神経に病気がある場合は、 白内障手術で改善を期待できる部分と、 網膜疾患によって残る可能性がある部分を分けて考えます。
散瞳眼底検査とOCTで、白内障の奥にある網膜を確認します
白内障術前検査では視力や眼内レンズの度数だけでなく、 手術後の見え方へ影響する網膜・黄斑の病気がないかを確認します。
散瞳眼底検査
瞳孔を広げて眼底を観察し、 黄斑だけでなく網膜周辺部まで確認します。
網膜裂孔、網膜剥離、出血などがないかを調べます。
黄斑OCT
OCTは網膜の断面を画像化する検査です。 黄斑上膜、黄斑円孔、黄斑浮腫など、 眼底を見ただけでは分かりにくい構造変化を確認します。
視力・屈折検査
眼鏡の度数を合わせた状態でも視力が十分に出ない場合、 白内障以外の病気が見え方へ影響していないかを考えます。
ゆがみの確認
黄斑上膜や黄斑円孔などでは、 直線が曲がる、文字がゆがむ、 左右で物の大きさが違うように感じることがあります。
網膜周辺部
中心部の黄斑だけでなく、 網膜裂孔や網膜剥離がないか周辺部まで確認します。
白内障が強い場合
水晶体の濁りが非常に強いと、 手術前に眼底を十分観察できない場合があります。 必要に応じて超音波検査などで眼球後方の大きな異常がないか確認します。
白内障を取り除いたあとに、 視力やゆがみがどの程度改善しそうかを考えるうえでも、 黄斑の状態を知ることが重要です。
網膜・黄斑の病気によって、白内障手術の考え方は変わります
同じ「網膜の病気」でも、 急いで治療する必要がある病気と、 症状や進行をみながら手術時期を考える病気があります。
かすみだけでなく「ゆがみ」があるかを確認します
黄斑上膜は、ものを見る中心である黄斑の表面に膜が形成され、 網膜が引っ張られる病気です。 白内障と黄斑上膜が両方ある場合、 見えにくさの原因を分けて考える必要があります。
白内障による全体的なかすみは白内障手術で改善を期待できますが、 黄斑上膜による物のゆがみは、 白内障手術だけでは改善しない場合があります。
OCTで黄斑の変形を確認し、 視力、ゆがみ、日常生活への影響、 白内障の程度を合わせて治療時期を判断します。
中心部の「欠け」「ゆがみ」は白内障だけでは説明できません
黄斑円孔は、網膜の中心である中心窩に穴が形成される病気です。 中心が欠ける、文字が途切れる、 人の顔の中心が見にくいなどの症状が出ることがあります。
完成した黄斑円孔では硝子体手術を検討します。 OCTで円孔径、硝子体による牽引、 網膜外層の状態などを確認します。
水晶体が残っている中高年の方では、 白内障の程度などを踏まえて 黄斑円孔の硝子体手術と白内障手術を同時に行うことがあります。
白内障手術の予定より先に、網膜を確認することがあります
網膜に裂け目がある場合、 網膜剥離へ進行する危険性を評価します。
裂孔の位置や形、周囲の網膜、 網膜剥離を伴っているかを確認し、 必要な場合は網膜光凝固などの治療を先に検討します。
白内障手術の時期は、 網膜の状態が安定しているかを確認しながら個別に判断します。
網膜を戻す治療の方が優先されることがあります
網膜裂孔から液体が網膜の下へ入り込み、 網膜が剥がれている状態です。
網膜剥離は放置すると視機能へ重大な影響を及ぼす可能性があるため、 通常の予定白内障手術よりも 網膜剥離に対する治療を優先する場合があります。
硝子体手術を行う際に白内障手術を併用するか、 網膜の治療後にあらためて白内障手術を行うかは、 年齢、水晶体、網膜剥離の状態などを確認して判断します。
糖尿病網膜症・黄斑浮腫の状態を確認します
糖尿病がある方では、 糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫が 白内障とは別に見え方へ影響していることがあります。
このテーマは別の専門記事で、 白内障手術と網膜治療の順序を詳しく解説します。
重要なのは、どの病気が現在の見えにくさへ影響しているか、 網膜治療を急ぐ必要があるか、 白内障手術をどの時点で行うのが適切かを整理することです。
白内障の予定があっても、急な症状が出た場合は網膜の確認を優先します
白内障は一般に徐々に進行します。 数時間から数日で急に見え方が変化した場合は、 白内障だけではなく網膜裂孔、網膜剥離、 硝子体出血などの可能性を考える必要があります。
- 黒い点や糸くずのような影が急に増えた
- 黒い煙やススのようなものが突然広がった
- 稲妻のような光が見える
- 視野にカーテンのような影が出た
- 視野の一部が急に見えなくなった
- 急に視力が低下した
- 中心部が突然暗くなった、欠けるようになった
このような症状がある場合は、 次回の通常診察や予定された白内障術前検査まで待たず、 早めに眼科へご相談ください。
白内障手術と網膜治療、どちらを先に行う?
「網膜疾患があれば必ず網膜手術が先」 「白内障があれば必ず白内障手術が先」というものではありません。 病気の緊急性、白内障の程度、年齢、網膜の状態から考えます。
- 白内障が見えにくさの主な原因と考えられる
- 網膜疾患が比較的安定している
- 急いで網膜手術を行う必要がない
- 白内障が眼底観察の妨げになっている
網膜の状態を確認したうえで、 白内障手術によってどの程度改善を期待できるか説明します。
- 網膜剥離など治療を急ぐ状態がある
- 網膜疾患が視力低下の主な原因である
- 黄斑の病気に対して硝子体手術が必要
- 網膜の状態を安定させる必要がある
網膜の機能を守ることを優先し、 白内障手術を行う時期はその後に検討することがあります。
- 硝子体手術が必要で白内障もある
- 中高年で水晶体が残っている
- 術後の白内障進行が問題になり得る
- 一度の手術計画で両方を治療する意味がある
すべての患者さんで同時手術が適切とは限りません。 水晶体が透明な若い方などでは硝子体手術のみとする場合があります。
白内障によって眼底を見にくい、 網膜治療を急ぐ、 硝子体手術後の白内障進行を考えるなど、 複数の条件を組み合わせて判断します。
白内障手術と硝子体手術を同時に行う場合
網膜・黄斑疾患で硝子体手術が必要な方に白内障もある場合、 白内障手術と硝子体手術を同じ手術時期に行うことがあります。
白内障手術を行う
濁った水晶体を取り除き、 水晶体嚢へ眼内レンズを挿入します。
硝子体手術へ進む
白目側に小さな入口を作り、 硝子体手術用の細い器具を眼内へ挿入します。
原因となる硝子体や膜を処理
黄斑上膜では網膜表面の膜、 黄斑円孔では黄斑を引っ張る硝子体や内境界膜など、 疾患に応じた処置を行います。
網膜周辺部まで確認
網膜裂孔などがないか、 必要な範囲を確認しながら手術を行います。
必要に応じて空気・ガスなどを使用
黄斑円孔や網膜剥離などでは、 病状に応じて眼内へ空気や医療用ガスを使用する場合があります。
同時手術を考える利点
- 白内障と網膜疾患を一つの治療計画で扱える
- 後日あらためて白内障手術を行う負担を減らせる場合がある
- 白内障による濁りを取り除いて網膜を観察しやすくできる
- 硝子体手術後の白内障進行をあらかじめ考慮できる
同時手術にしないことがある理由
- 若く水晶体が透明である
- 白内障がほとんど進行していない
- 眼内レンズ度数を慎重に検討したい事情がある
- 網膜疾患の状態から硝子体手術単独が適している
年齢、水晶体の透明性、網膜疾患の種類、 術後の見え方、今後の治療予定などを考慮して判断します。
黄斑円孔では、白内障手術との同時手術を考えることがあります
有田眼科では、黄斑円孔に対する日帰り小切開硝子体手術に対応しています。 水晶体が残っている中高年の方では、 年齢、白内障の程度、網膜の状態などを確認し、 必要に応じて白内障手術を同時に行います。
黄斑円孔では、 硝子体による牽引を取り除き、 網膜表面の内境界膜を処理し、 必要に応じて空気や医療用ガスを眼内へ入れて 円孔の閉鎖を促します。
黄斑円孔が閉鎖した後も、 網膜内部や視細胞に関係する構造が時間をかけて回復するため、 視力やゆがみの改善には個人差があります。
黄斑円孔などでガスを使用した場合は、 術後の姿勢や移動について個別の指示があります。 詳しい術後管理は対象疾患・術後案内ページでご確認ください。
硝子体手術後に白内障が進むことがあります
水晶体を残して硝子体手術を行った場合、 その後に白内障が進行することがあります。 特に中高年では、 網膜の手術がうまくいっても白内障の濁りが強くなることで、 かすみが残ったように感じる場合があります。
網膜は改善しているのにかすむ
OCTでは黄斑が改善していても、 後から白内障が進行すると 水晶体の濁りによる見えにくさが生じます。
白内障手術を追加することがある
硝子体手術後に白内障が進み、 日常生活へ影響するようになれば、 後日白内障手術を検討する場合があります。
最初から同時手術を考える場合も
年齢や水晶体の状態によっては、 将来の白内障進行も踏まえて 硝子体手術と同時に白内障手術を行うことがあります。
網膜、黄斑、水晶体、角膜など どの部分が現在の見えにくさへ影響しているかを 改めて確認することが大切です。
網膜・黄斑疾患がある方の眼内レンズ選び
白内障手術では眼内レンズを挿入しますが、 網膜や黄斑に病気がある方では、 白内障だけがある方と同じ考え方で レンズを決められない場合があります。
現在の視力だけでなく、 黄斑の状態、ゆがみ、コントラスト、 将来必要になる可能性がある網膜治療なども確認して、 目の状態に適した選択肢を考えます。
網膜・黄斑・視神経・角膜の状態と、 患者さんが生活で必要とする見え方を合わせて検討します。 具体的なレンズの種類・製品・費用は、 眼内レンズ専用ページで詳しくご案内します。
有田眼科の白内障・網膜硝子体手術体制
有田眼科では、白内障手術だけでなく 網膜硝子体手術にも対応しています。 白内障と網膜疾患が重なっている場合も、 水晶体と網膜を分けて考えず、 目全体の状態から治療計画を検討します。
コンステレーション
ビジョンシステム
有田眼科で導入が確認できる 白内障・網膜硝子体手術装置です。 病状に応じて硝子体手術へ使用します。
27G小切開硝子体手術
有田眼科では、 細い器具を使用する27Gシステムによる 小切開硝子体手術に対応しています。
RESIGHT
手術中に眼底を広い範囲で観察するための 広角観察システムを使用しています。
日帰りで硝子体手術を行えるかどうかは、 網膜疾患の種類、病状、全身状態、 術後に必要な管理などを確認して判断します。
手術前に知っておきたい「見え方の限界」
白内障と網膜疾患が重なっている患者さんでは、 「手術後に何が改善し、何が残る可能性があるか」を 手術前に整理することが重要です。
白内障手術で改善を期待する部分
- 水晶体の濁りによるかすみ
- 白内障によるまぶしさ
- 水晶体の濁りによる視力低下
- 濁りによって低下していたコントラスト
網膜疾患によって残る可能性がある部分
- 黄斑上膜によるゆがみ
- 黄斑円孔による中心部の見えにくさ
- 網膜剥離で障害された網膜による視力低下
- 糖尿病黄斑浮腫などによる中心視力低下
「視力」と「見え方の質」は同じではありません。 網膜疾患がある方では、 文字のゆがみ、左右差、中心部の見えにくさなども含めて経過を確認します。
網膜・黄斑の病気と白内障手術についてよくある質問
黄斑上膜があります。白内障手術をすればゆがみも治りますか?
白内障手術は水晶体の濁りを取り除く手術なので、 黄斑上膜そのものを取り除くことはできません。 白内障によるかすみは改善を期待できますが、 黄斑上膜によるゆがみが残る可能性があります。 OCTで黄斑の状態を確認して判断します。
黄斑上膜と白内障は、どちらを先に手術しますか?
一律には決まりません。 白内障の程度、黄斑上膜によるゆがみ・視力低下、 OCT所見、日常生活への影響などから判断します。 硝子体手術が必要で白内障もある場合は、 同時手術を検討することもあります。
黄斑円孔と白内障は同時に手術できますか?
水晶体が残っている中高年の方では、 年齢、白内障の程度、黄斑円孔の状態などを確認し、 硝子体手術と白内障手術を同時に行う場合があります。 すべての患者さんに同時手術が必要なわけではありません。
網膜剥離がある場合、先に白内障手術をしてもいいですか?
網膜剥離は視機能へ重大な影響を及ぼす可能性があるため、 多くの場合はまず網膜の状態と治療の緊急性を評価します。 網膜治療と白内障手術の順序や同時手術の可否は、 剥離の範囲、水晶体の状態、年齢などから判断します。
以前、網膜剥離の手術を受けています。白内障手術はできますか?
白内障手術を検討できる場合があります。 手術前に網膜が安定しているか、 過去にどのような網膜剥離手術を受けたか、 現在の眼底の状態などを確認します。 過去の手術内容が分かる資料があればお持ちください。
硝子体手術を受けると白内障になりますか?
水晶体を残して硝子体手術を行った場合、 その後に白内障が進行することがあります。 特に中高年では、 網膜疾患と水晶体の状態を考えて 最初から白内障手術を併用する場合があります。
網膜の病気があると多焦点眼内レンズは使えませんか?
網膜疾患があるという理由だけで、 すべての眼内レンズの選択肢が一律に決まるわけではありません。 黄斑・視神経・角膜の状態、 現在と将来の見え方を考えて個別に検討します。 眼内レンズの詳しい説明は専用ページでご案内します。
白内障手術の予定がありますが、急に飛蚊症が増えました。手術日まで待っていいですか?
予定日まで待たずにご相談ください。 急な飛蚊症、光が走る症状、 視野のカーテン状の影などは、 網膜裂孔・網膜剥離などでみられることがあります。 まず眼底を確認することが重要です。
白内障手術後もOCT検査は必要ですか?
黄斑上膜、黄斑円孔、糖尿病網膜症など 網膜疾患がある場合は、 白内障手術後も必要に応じてOCTで経過を確認します。 白内障手術が終わっても網膜疾患の診療が終了するわけではありません。
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有田眼科 院長 有田 量一
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