ぶどう膜炎がある方の白内障手術は、
「白内障が進んだか」だけでは手術時期を決めません
ぶどう膜炎では、眼内の炎症そのものや、 治療に使用するステロイド薬などの影響によって 白内障が進行することがあります。
一方、炎症が強い時期に白内障手術を行うと、 手術をきっかけに炎症が強くなったり長引いたりする可能性があります。 そのため、現在の炎症が十分に落ち着いているか、 虹彩の癒着、眼圧、黄斑浮腫、網膜・視神経などを確認して 手術の時期を考えることが重要です。
ぶどう膜炎では、白内障以外にも 前房炎症、硝子体混濁、黄斑浮腫、 網膜炎、続発緑内障などで視力が低下します。 白内障を取り除くだけで、すべての見えにくさが改善するとは限りません。
ぶどう膜炎で白内障が進む理由
ぶどう膜炎では、水晶体だけが単独で悪くなるわけではありません。 炎症の経過や治療が水晶体へ影響し、 白内障が進行する場合があります。
眼内炎症そのもの
虹彩・毛様体などの炎症が長く続いたり 再発を繰り返したりすると、 水晶体の濁りが進むことがあります。
ステロイド治療
ぶどう膜炎を抑えるために必要なステロイド薬でも、 使用期間や量などによって 白内障が進行することがあります。
病気と治療の両方を考える
「ステロイドを使わなければ白内障にならない」と単純には考えません。 炎症を十分に治療しないことによる 視機能障害も避ける必要があります。
炎症の再燃によって、 黄斑や網膜、視神経などへ影響する可能性があります。 薬の変更はぶどう膜炎の活動性を確認して判断します。
最も重要|ぶどう膜炎では「炎症を落ち着かせてから」白内障手術を考えます
活動期のぶどう膜炎では、 白内障手術をきっかけに強い炎症を生じたり、 炎症が長引いたりする可能性があります。
2026年の「ぶどう膜炎診療ガイドライン 第2版」では、 原則として薬物療法による確実な消炎を行い、 炎症の鎮静化を最低2か月以上確認したうえで 白内障手術を計画することが望ましいとされています。
ただし、ぶどう膜炎の種類や経過によって例外があります。 「2か月たてば自動的に手術できる」という意味ではありません。 診察時の炎症所見、再発歴、使用している薬、 網膜・黄斑・眼圧などを合わせて判断します。
これは「Fuchs角膜内皮ジストロフィ」とは別の病気です。 ぶどう膜炎を一つの病気として扱わず、 原因・病型を確認することが大切です。
白内障手術前に、炎症・眼圧・黄斑・網膜まで確認します
ぶどう膜炎患者さんの白内障手術では、 眼内レンズ度数を測るだけでは不十分です。 現在の炎症活動性と、白内障以外に視力を低下させる原因がないかを確認します。
細隙灯顕微鏡で前房炎症を確認
前房細胞、フレア、角膜後面沈着物などを確認し、 眼内炎症が活動していないかを評価します。
虹彩後癒着と瞳孔を確認
炎症によって虹彩が水晶体へ癒着していると、 散瞳薬を使用しても瞳孔が十分に開かないことがあります。
眼圧を確認
ぶどう膜炎では炎症、虹彩の癒着、 房水流出路の障害、ステロイドへの反応などによって 眼圧が上がる場合があります。
黄斑OCTを確認
黄斑浮腫や網膜の構造変化がある場合、 白内障だけを手術しても 視力が十分に改善しない可能性があります。
散瞳眼底検査
硝子体、網膜、網膜血管、黄斑、視神経などを確認し、 ぶどう膜炎による後眼部病変がないかを評価します。
治療歴・再発歴を確認
過去の炎症発作、ステロイド使用歴、 免疫抑制薬・生物学的製剤、 他科での治療状況なども確認します。
前房炎症、硝子体混濁、黄斑浮腫、 網膜炎、視神経障害などが重なっている場合は、 白内障手術後に期待できる見え方を慎重に考えます。
感染性ぶどう膜炎か、非感染性ぶどう膜炎かも重要です
「ぶどう膜炎」は一つの原因で起こる病気ではありません。 自己免疫などによる非感染性ぶどう膜炎だけでなく、 ウイルス、細菌、真菌などが関係する感染性ぶどう膜炎もあります。
非感染性ぶどう膜炎
サルコイドーシス、フォークト・小柳・原田病、 ベーチェット病など、 免疫反応が関係する病気があります。
炎症の活動性と全身治療の状態を確認しながら 白内障手術時期を考えます。
感染性ぶどう膜炎
ヘルペスウイルスなどの感染が原因となる場合があります。 感染症では炎症を抑えることだけを考えず、 原因病原体に対する治療が重要です。
病状によっては高次医療機関との連携が必要になります。
感染症が原因の場合、 ステロイド治療が病状へ影響することがあります。 再発と思っても、診察で原因を確認することが重要です。
虹彩後癒着・小瞳孔があると、白内障手術の難易度が上がることがあります
ぶどう膜炎を繰り返すと、 虹彩の裏側が水晶体表面へくっつく 「虹彩後癒着」が生じることがあります。
癒着があると瞳孔が丸く広がらず、 白内障手術で水晶体を確認できる範囲が狭くなることがあります。
瞳孔が開きにくい
散瞳薬を点眼しても 水晶体周辺まで十分に見えない場合があります。
癒着を解除することがある
一般的には、 手術中に虹彩と水晶体の癒着を 丁寧に解除する処置を行うことがあります。
瞳孔拡張の補助が必要な場合
小瞳孔が強い場合は、 粘弾性物質や瞳孔を広げる補助器具などを 状態に応じて使用することがあります。
癒着の範囲、瞳孔の大きさ、 炎症の活動性、水晶体を支える組織などを確認し、 必要な追加操作を想定して手術を計画します。
ぶどう膜炎がある方の白内障手術で特に意識する操作
基本的な白内障手術は、 小さな切開から濁った水晶体を取り除き、 水晶体嚢へ眼内レンズを挿入する方法です。 ぶどう膜炎では、それに加えて炎症後の変化へ注意します。
十分な術野を確保する
虹彩後癒着や小瞳孔があれば、 水晶体嚢を安全に確認できる範囲を確保してから 手術操作を進めます。
前嚢を確認しながら円形に開く
小さな瞳孔では前嚢周辺が見えにくいため、 開口部の大きさ・位置を確認しながら操作します。
水晶体を目の状態に合わせて処理
白内障の硬さや眼内の状態に合わせて、 超音波と吸引を調整しながら水晶体を取り除きます。
残った水晶体皮質を確認
特に小瞳孔では虹彩の裏側が見えにくくなるため、 水晶体嚢周辺に皮質が残っていないか確認します。
水晶体嚢の状態を確認
眼内レンズを入れる前に、 水晶体嚢や支持組織が安定しているかを確認します。
術後炎症を想定する
ぶどう膜炎患者さんでは、 通常の白内障手術以上に 術後の炎症、眼圧、黄斑の状態を意識して経過を確認します。
白内障手術では手術時間だけを短くすることを目的とせず、 角膜、水晶体嚢、虹彩などへの負担を考えながら 一つひとつの操作を行います。
ぶどう膜炎がある方では、眼内レンズの選択にも注意します
白内障手術では通常、 残した水晶体嚢の中へ眼内レンズを挿入します。 ぶどう膜炎がある場合も眼内レンズを挿入できることは多いものの、 炎症の種類・活動性や目の状態を考えて選択します。
まず炎症と網膜・黄斑を確認
眼内レンズの種類を決める前に、 炎症が安定しているか、 黄斑や視神経に視機能を制限する病気がないかを確認します。
レンズの機能だけで選ばない
コントラストや網膜・黄斑の状態、 将来の炎症・眼底観察なども考えて 眼内レンズを検討します。
ただし、眼内レンズの具体的な適応は ぶどう膜炎の種類、黄斑・網膜・視神経、 角膜、患者さんの生活などを含めて個別に判断します。 製品比較は眼内レンズ専用ページでご案内します。
ぶどう膜炎がある方は、白内障手術後の炎症・眼圧・黄斑を丁寧に確認します
手術が問題なく終了しても、 ぶどう膜炎がある方では 術後炎症や合併症の経過観察が重要です。
ぶどう膜炎では、 角膜、前房、眼圧、水晶体嚢、硝子体、 黄斑・網膜など複数の場所が 術後の見え方へ影響する可能性があります。
白内障手術後の「黄斑浮腫」に特に注意します
黄斑は、文字を読んだり人の顔を見たりするときに使う 網膜の中心部分です。
ぶどう膜炎では炎症そのものによって黄斑浮腫が生じることがあり、 白内障手術後にも嚢胞様黄斑浮腫が問題となる場合があります。
手術前
OCTで黄斑浮腫がすでにないか確認し、 白内障以外の視力低下原因を評価します。
手術後
視力改善が遅い、 中心がぼやける、 物がゆがむ場合などは 必要に応じてOCTを再確認します。
炎症との関係
黄斑浮腫だけを見るのではなく、 ぶどう膜炎全体の活動性と合わせて治療を考えます。
黄斑浮腫、網膜病変、視神経障害、 角膜浮腫、眼圧上昇などを確認する必要があります。
ステロイド治療中の方は、眼圧も確認します
ぶどう膜炎では、 炎症そのものによって眼圧が上がる場合と、 治療に使用するステロイド薬への反応によって 眼圧が上がる場合があります。
さらに、虹彩後癒着や隅角の癒着によって 房水の流れが悪くなることもあります。
現在の眼圧
一度の測定値だけでなく、 これまでの眼圧推移も確認します。
視神経・OCT・視野
眼圧上昇が続いている場合は、 視神経障害がないかを確認します。
隅角・癒着
必要に応じて房水の出口である隅角の状態や 周辺虹彩前癒着などを確認します。
炎症活動性、癒着、眼圧上昇の原因、 視神経障害の程度を確認して 治療の順番と術式を考えます。
白内障手術が決まっても、ぶどう膜炎の薬を自己判断で変更しないでください
ぶどう膜炎治療中の方では、 ステロイド点眼、内服薬、 免疫抑制薬、生物学的製剤などを使用している場合があります。
手術前後にどの治療を継続するか、 一時的に調整する必要があるかは、 ぶどう膜炎の原因・活動性と全身状態によって異なります。
持参してほしい情報
- 現在使用している点眼薬
- 内服ステロイドの有無
- 免疫抑制薬・生物学的製剤
- お薬手帳
- 他科の主治医・通院先
確認したい治療歴
- ぶどう膜炎の診断名
- 最後に炎症が再燃した時期
- 過去の眼内注射・眼周囲注射
- 過去の眼科手術
- 全身疾患の治療状況
炎症が再燃すると、 白内障手術そのものを延期する必要が生じたり、 網膜・黄斑などへ影響したりする可能性があります。
白内障手術で改善できる部分と、ぶどう膜炎によって残る可能性がある部分
白内障手術で改善を期待する部分
- 水晶体の濁りによるかすみ
- 白内障によるまぶしさ
- 水晶体混濁による視力低下
- 白内障によるコントラスト低下
別の病変で残る可能性がある部分
- 黄斑浮腫による中心視力低下
- 網膜炎後の網膜障害
- 硝子体混濁によるかすみ
- 続発緑内障による視野障害
- 視神経障害による視力低下
白内障だけを見るのではなく、 OCTや眼底、視神経などを確認し、 白内障手術で改善を期待できる範囲を説明します。
手術前後に早めの受診が必要な症状
ぶどう膜炎の再燃や、 網膜・眼圧・感染など別の問題が起きている可能性があります。
- 急に目が赤くなった
- 強い目の痛みが出た
- 急にまぶしくなった
- 急に見えにくくなった
- 飛蚊症が急に増えた
- 視野に影やカーテンのような部分が出た
- 中心部がゆがむ・ぼやける
- 強い頭痛や吐き気とともに見えにくくなった
白内障手術の予定が決まっている場合でも、 次回予約まで待たずにご相談ください。
ぶどう膜炎と白内障手術についてよくある質問
ぶどう膜炎があっても白内障手術はできますか?
手術を検討できる場合があります。 ただし炎症が活動している時期の手術では 炎症が強くなったり長引いたりする可能性があるため、 ぶどう膜炎の活動性を確認して手術時期を判断します。
炎症が落ち着いてから何か月待てば手術できますか?
2026年のぶどう膜炎診療ガイドライン第2版では、 原則として炎症の鎮静化を最低2か月以上確認したうえで 手術を計画することが望ましいとされています。 ただし、病型や再発歴などによって個別に判断します。
2か月炎症がなければ必ず手術できますか?
期間だけで決まりません。 前房炎症、眼圧、黄斑、網膜、 虹彩癒着、治療内容などを確認して 総合的に判断します。
ステロイドが原因の白内障なら、ステロイドを止めた方がいいですか?
自己判断では中止しないでください。 ステロイドはぶどう膜炎の炎症を抑えるために 必要な治療である場合があります。 炎症の状態を確認して治療内容を調整します。
瞳孔が開きにくいと言われています。手術できますか?
手術を検討できる場合があります。 虹彩後癒着や小瞳孔がある場合は、 癒着解除や瞳孔を広げる補助的な方法が 必要になることがあります。
ぶどう膜炎があると多焦点眼内レンズは使えませんか?
ぶどう膜炎診療ガイドライン第2版では、 一般にぶどう膜炎患者では多焦点眼内レンズの選択を 避ける方がよいとされています。 実際の眼内レンズ選択は、 炎症の病型、黄斑・網膜・視神経、 角膜などを確認して個別に判断します。
白内障手術後にぶどう膜炎が再発することはありますか?
手術を契機に眼内炎症が強くなる場合があります。 そのリスクを減らすためにも、 術前に炎症が十分落ち着いていることを確認し、 術後も炎症所見を注意して確認します。
白内障手術後に視力が上がらなかったら失敗ですか?
そうとは限りません。 黄斑浮腫、網膜炎後の変化、硝子体混濁、 緑内障や視神経障害などが 視機能を制限していることがあります。 OCTや眼底などで原因を確認します。
ぶどう膜炎で眼圧も高いのですが、白内障手術できますか?
眼圧上昇の原因、視神経障害、 隅角の癒着、炎症活動性を確認して判断します。 白内障だけを治療するか、 緑内障治療を先に行うかなど、 病状によって治療計画が異なります。
他院や大学病院でぶどう膜炎を治療しています。白内障だけ有田眼科で相談できますか?
まず白内障と現在の眼内状態を確認します。 ぶどう膜炎の病型や全身治療の内容によっては、 現在治療を担当している医療機関と 情報共有・連携が必要になる場合があります。 紹介状や治療経過が分かる資料があればお持ちください。
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有田眼科では、 白内障の濁りだけでなく、 前房炎症、虹彩後癒着、瞳孔、眼圧、 黄斑OCT、網膜・視神経などを確認し、 白内障手術を行う時期と方法を検討します。
他院でぶどう膜炎の治療を受けている方は、 診断名、最近の再燃時期、 使用している点眼薬・内服薬などが分かる資料を お持ちいただくと診療の参考になります。
有田眼科 院長 有田 量一
〒810-0033 福岡県福岡市中央区小笹2丁目2-3